セッション情報 専修医セッション(卒後3-5年)

タイトル 17:

HBV genotype G/A2によるB型慢性肝炎を認めたHIV陽性男性同性愛者の一例

演者 児玉 華子(北里研究所病院 消化器内科)
共同演者 清水 清香(北里研究所病院 消化器内科), 加藤 裕佳子(北里研究所病院 消化器内科), 筋野 智久(北里研究所病院 消化器内科), 小林 拓(北里研究所病院 消化器内科), 中野 雅(北里研究所病院 消化器内科), 常松 令(北里研究所病院 消化器内科), 渡辺 憲明(北里研究所病院 消化器内科), 芹澤 宏(北里研究所病院 消化器内科), 土本 寛二(北里研究所病院 消化器内科), 森永 正二郎(北里研究所病院 病理診断科 ), 溝上 雅史(独立行政法人 国立国際医療研究センター研究所 肝炎・免疫研究センター 肝疾患研究部), 杉山 真也(独立行政法人 国立国際医療研究センター研究所 肝炎・免疫研究センター 肝疾患研究部)
抄録 【症例】36歳男性。10年前の入社時健診で肝機能障害を指摘されたが、翌年以降の健診では、正常化しないものの改善傾向にあったため放置していた。2013年5月、発熱を主訴に近医を受診した際、HBV陽性の肝機能障害を指摘され、当院紹介受診となった。AST/ALT 65/88 IU/mlと肝機能障害を認め、セロコンバージョンしておらず、ウイルス量も>9.1 log IU/mlと高値で活動性が高く、発症から10年以上経過している慢性肝炎であった。EIA法で遺伝子型はgenotype Dであり、IFNの治療効果は高くないと思われた。また、挙児希望があった。治療方針を決めるため肝生検を施行し、A2F3であった。母親がHBV陰性であることから、水平感染、特に性行為感染症が疑われ、詳細な問診を行ったところ、感染地はタイで、不特定多数の同性間での性交渉による感染と考えられた。同意のもと検査し、HIV-1陽性と判明した。白血球数 3150/μl、リンパ球数 1690/μlであり、身体所見上も明らかなAIDSに関連する臨床症状は認められず、無症候期と考えられた。B型慢性肝炎に関して治療が必要であったことから、専門機関への転医となった。なお、遺伝子型の判定は当初EIA法で行いgenotype Dという結果であったが、後日あらためて国立国際医療研究センター研究所に詳細な検査を依頼したところ、genotype G/A2と判明した。
【考察】HBV感染は遺伝子型に地域性があり、本邦においてはgenotype Cが大半を占め、これにtype B、Aが続き、genotype DやGは非常にまれである。また、B型肝炎は治療効果が遺伝子型によって異なることが知られており、genotype DはIFN治療抵抗性で、genotype GはHIVとの混合感染で肝線維化が増悪する可能性を示唆する報告がある。Genotype GのHBV感染は、本邦では極めて珍しいが、男性同性愛者かつHIVとの混合感染を認めた点では典型例であり、genotype A2との遺伝子組み換えもあり、非常に示唆に富む症例であったので、若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 HBV genotype G/A2, HIV陽性