セッション情報 ワークショップ14(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器がん検診学会合同)

患者にやさしい上部消化管内視鏡検査の工夫

タイトル 内W14-6:

患者に優しい上部消化管内視鏡検査のための前処置の工夫とペパーミントオイルの有用性

演者 引地 拓人(福島県立医大附属病院・内視鏡診療部)
共同演者 佐藤 匡記(福島県立医大・消化器・リウマチ膠原病内科), 小原 勝敏(福島県立医大附属病院・内視鏡診療部)
抄録 【緒言】早期胃癌の診断に上部消化管内視鏡検査(EGD)は有用であるが,高い精度で施行するためには苦痛軽減が重要である.患者に優しい経口的EGDを目指した当院の工夫について述べる.【咽頭麻酔】206名を,ビスカス法106名(2%キシロカインビスカス5ml)とスプレー法100名(8%キシロカインスプレー5回噴霧)に無作為に振り分けた.麻酔時のむせりの割合(ビスカス法9.4%,スプレー法2.0%;P=0.02)と麻酔の苦痛度(ビスカス法:平均値2.0点(0-5点で5点が最悪),スプレー法:平均値1.2点;P<0.0001)はスプレー法で少なく,スコープ挿入時の苦痛度と嘔吐反射回数に差はなかった.両方の咽頭麻酔経験者の次回の希望は,ビスカス法14%,スプレー法75%であった.【鎮痙剤としてのペパーミントオイル(PO)】85例に対し,中部食道と胃前庭部で1.6%POを50mlずつ散布したところ,91.8%で胃前庭部の蠕動運動が抑制された.抗コリン剤筋注経験者の79.5%が次回もPOでのEGDを希望した.【早期胃癌の境界診断におけるPO】早期胃癌26例に対し,白色光と非拡大NBIでの観察後,腫瘍にPOを散布し観察した.白色光で65.4%,非拡大NBIで53.8%に,POによる境界診断の上乗せ効果があった.【EGD前処置の工夫】粘液除去の目的でプロナーゼを内服させるが,飲みやすいように栄養剤用フレーバーを混ぜている.咽頭麻酔は,挿入直前にキシロカインスプレー少量(40-80mg)を単独で投与する.鎮痙剤の筋注は使用せず,蠕動が強い場合にのみPOを散布する.苦痛が強い患者ではミダゾラムによる鎮静,長時間かかることが予想される患者にはCO2送気で行う.【結語】咽頭麻酔をキシロカインスプレー少量投与で行い,鎮痙剤に抗コリン剤を使用しない前処置は,患者に優しいEGDに寄与する.また,簡便に使用できるPOは,蠕動抑制と早期胃癌の境界診断に有用である.
索引用語 ペパーミントオイル, 前処置