セッション情報 研修医セッション(卒後2年迄)

タイトル 68:

NASH肝硬変の難治性腹水に対して腹腔静脈シャントが奏功した一例

演者 宮川 真梨江(群馬大学 医学部 病態制御内科)
共同演者 橋爪 洋明(群馬大学 医学部 病態制御内科), 堀口 昇男(群馬大学 医学部 病態制御内科), 山崎 勇一(群馬大学 医学部 病態制御内科), 柿崎 暁(群馬大学 医学部 病態制御内科), 佐藤 賢(群馬大学 医学部 病態制御内科), 草野 元康(群馬大学 医学部 光学医療診療部), 山田 正信(群馬大学 医学部 病態制御内科)
抄録 【症例】61歳,女性【現病歴】腹部膨満感を主訴に2007年7月当科を初診し,NASHによる肝硬変・腹水症と診断され,水分・塩分制限とアルブミン製剤・利尿剤投与にて腹水は消失した.2011年4月食道静脈瘤に内視鏡的静脈瘤結紮術を施行後,外来での腹腔穿刺・腹水排液の頻度が増えたため2013年6月に腹水濾過濃縮再静注療法(CART)を導入した.CARTを計4回施行したが,CART後1週で8-10kgの体重増加と腹部膨満感を認めたため,同年8月精査加療目的に当科入院となった.【既往】2004年8月:糖尿病,脂肪肝.2010年8月に肝細胞癌(HCC)に対して経カテーテル的肝動脈塞栓術(TACE)を施行.【身体所見】身長151cm, 体重 80.1kg (BMI=34.9),黄疸なし,著明な腹水貯留あり,下腿浮腫を軽度認めた.【検査所見】Plt 9.2万/ul, ALB 2.7 g/dl, T-bil. 1.2 mg/dl, PT 75%,AST 37 U/l, ALT 21 U/l, ALP 422 U/l,γ-GTP 27 U/l, 肝炎ウィルスマーカー/ANA/AMAはいずれも陰性,IgG/IgM/各種腫瘍マーカー基準値範囲内,CT上肝萎縮と側副血行路の発達・著明な腹水貯留と臍ヘルニアを認めた.腹水:性状は微紅色・透明・漏出性,細胞診ClassI~II,複数回の塗末・培養検査はいずれも陰性であった.【入院後経過】腹水は漏出性,また開腹手術歴なく,心・腎機能は良好,既存治療に抵抗性であることから腹腔静脈シャントの適応と判断し,Denver ascites shunt system: Percutaneous access kit (double valve type), Care Fusion社製を腹腔側は左骨盤腔内,静脈側は左鎖骨下静脈経由にて留置した.術後に前値から最大約60%の血小板減少を認めたが,ガベキサートメシル酸塩投与等で改善した.挿入後約2週間の経過でCT上腹水はほぼ消失,体重は約10kg減少し,軽快退院された.ADLの改善,Alb値・PT活性など肝予備能の回復を認めており,HCC再発に対して追加治療を検討中である.【結語】NASH肝硬変の難治性腹水に対して腹腔静脈シャントが奏功した一例を経験したので,シャント造設前後に行った患者指導など工夫も含め、報告する.
索引用語 腹腔静脈シャント, 難治性腹水