セッション情報 研修医セッション(卒後2年迄)

タイトル 57:

血小板減少と乏尿を伴い重症化したベロ毒素陰性病原性大腸菌0-157感染の1例

演者 宗像 紅里(水戸済生会総合病院 消化器内科)
共同演者 柏村 浩(水戸済生会総合病院 消化器内科), 鹿志村 純也(水戸済生会総合病院 消化器内科), 渡辺 孝治(水戸済生会総合病院 消化器内科), 濱中 紳策(水戸済生会総合病院 消化器内科), 中村 琢也(水戸済生会総合病院 消化器内科), 大川原 健(水戸済生会総合病院 消化器内科), 浅野 康治郎(水戸済生会総合病院 消化器内科), 仁平 武(水戸済生会総合病院 消化器内科), 大久保 裕貴(水戸済生会総合病院 腎臓内科), 片山 泰輔(水戸済生会総合病院 腎臓内科), 佐藤 ちひろ(水戸済生会総合病院 腎臓内科), 海老原 至(水戸済生会総合病院 腎臓内科)
抄録 【緒言】腸管出血性大腸菌(enterohemorrhagic Escherichia coli; EHEC)感染は、ベロ毒素を産生する病原性大腸菌によって引き起こされ、溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome; HUS)を合併する等、重症例や死亡例もみられる。血清型0-157の大腸菌感染はEHECの8割以上を占めると言われ、診断治療は早期に適切に行われるべきである。【症例】76歳女性。【主訴】腹痛と血便。【現病歴】2013年6月23日から、誘因と成り得る食餌歴なく主訴が出現し軽快しないため、近医で虚血性腸炎が疑われ第2病日に当科に紹介入院となった。【経過】入院後も腹痛が持続し、血性の下痢が次第に頻回となった。第3病日に撮影したCTでは大腸浮腫が著明で、分布も上行結腸からS状結腸まで広範な為、EHECも疑った。第4病日に便検査で大腸菌(0-157)が陽性となり、ベロ毒素は陰性であったがEHECに準じて治療した。抗菌薬は当初、重症虚血性大腸炎も考えて第3病日からMEPMを開始していたが、ETEC判明翌日の第5病日に、LVFX内服も3日間追加した。第4病日から、呼吸不全徴候、乏尿や心不全徴候、血小板減少が現れ、HUSの定義を満たさなかったものの、病態としてはHUSまたはDICに近いと考えた。輸血やトロンボモジュリン製剤などで治療をしたところ、呼吸循環状態が落ち着き、大腸浮腫も軽快し、後遺症無く退院した。【考案】検出された大腸菌0-157はベロ毒素陰性であったが、菌株によっては感染初期に陽性だったベロ毒素が生体内で陰性化する報告も有り、本症例がEHECであった可能性を否定は出来ないと考えた。抗菌薬の使用については、アメリカのガイドラインでは、HUSのリスクを増大させるため使用しないよう勧めているが、日本では適切な抗菌薬を早期に使用する事を勧めている。本症例では、特定の食餌歴がなくとも、微熱と強い腹痛と大腸浮腫から、初めからEHECを強く疑って検査を進めていれば、より早期の抗菌薬の投与を行うことが出来たかもしれない。若干の文献的考察を含めて報告する。
索引用語 0-157, 抗菌薬治療