セッション情報 一般演題

タイトル 43:

直腸静脈瘤出血を合併した特発性門脈圧亢進症の一例

演者 清野 宗一郎(千葉大学医学部附属病院 消化器内科)
共同演者 丸山 紀史(千葉大学医学部附属病院 消化器内科), 近藤 孝行(千葉大学医学部附属病院 消化器内科), 関本 匡(千葉大学医学部附属病院 消化器内科), 嶋田 太郎(千葉大学医学部附属病院 消化器内科), 横須賀 收(千葉大学医学部附属病院 消化器内科)
抄録  特発性門脈圧亢進症(IPH)は非硬変性門亢症の代表的疾患で、食道静脈瘤を高率に合併する。今回我々は、直腸静脈瘤出血を来したIPHの一例を経験したので報告する。症例は66歳、女性。全身性エリテマトーデスの診断にて近医でステロイド治療を受けていた。2005年に肝機能異常ならびに食道静脈瘤を指摘され、2008年に食道静脈瘤(F2)に対して内視鏡的硬化療法・結紮術の予防治療が行われた。2011年に残便感の精査目的での大腸内視鏡検査で直腸に連珠状の静脈瘤を指摘された。その後、同部からの出血を繰り返したため、2012年3月に精査加療目的で当院に紹介となった。血液検査では汎血球減少と軽度の肝機能異常を認めたが画像上は肝硬変の所見に乏しく、非硬変性門亢症が疑われた。また上腸間膜静脈に限局性血栓を認め、遠肝性血流の下腸間膜静脈を伴っていた。
 大腸内視鏡では数条の直腸静脈瘤(Ra~Rb、F2、出血点不明)を認めた。まず23G穿刺針で血管内穿刺を行いヨード造影剤を注入した。X線上造影剤の停滞が得られたため、続いて5% EOI 5mLを注入した。4日後の超音波内視鏡で静脈瘤の血栓化を確認し治療終了とした。その後、肝生検や肝静脈造影検査を行いIPHと診断された。しかし、治療4か月後に再出血を認め、内視鏡で静脈瘤再発が確認された。再度、2回の内視鏡的硬化療法を施行し静脈瘤の血栓化を得たが、5か月後に再々発を認めたため内視鏡的硬化療法に加え数か所の結紮術を追加した。その後6か月の経過で出血や再発を認めていない。
 直腸静脈瘤は、一般に複数の排血路が存在するためB-RTOが困難とされており、内視鏡的治療の適応となることが多い。本例では内視鏡挿入によって肛門部の流出路血管が圧迫された結果、造影剤や硬化剤の良好な停滞が得られたものと考えられた。すなわち、内視鏡的硬化療法は、直腸静脈瘤治療の選択肢の一つとなりうることが示された。しかし、硬化療法単独では長期効果に弱いこともあり、地固め療法の適応や手法の選択が今後の課題である。
索引用語 直腸静脈瘤, 門脈圧亢進症