セッション情報 専修医セッション(卒後3-5年)

タイトル 7:

難治性の蛋白漏出性胃腸症に播種性クリプトコッカス症が合併していた一例

演者 伊藤 翔子(順天堂東京江東高齢者医療センター 消化器内科)
共同演者 石川 大(順天堂東京江東高齢者医療センター 消化器内科), 高嶋 志在(順天堂東京江東高齢者医療センター 消化器内科), 中江 弘三郎(順天堂東京江東高齢者医療センター 消化器内科), 染谷 秀忍(順天堂大学順天堂医院 消化器内科), 横井 一徳(順天堂大学順天堂医院 消化器内科), 川上 智寛(順天堂浦安病院 消化器内科), 松山 秀二郎(順天堂東京江東高齢者医療センター 消化器内科)
抄録 【はじめに】今回我々は、難治性の蛋白漏出性胃腸症の剖検から全身への播種性クリプトコッカス症を認め、臨床経過からクリプトコッカス症が蛋白漏出性胃腸症の誘因となった可能性がある症例を経験したのでこれを報告する。【症例】80歳女性【現病歴】近医にて関節リウマチの診断でPSL5mg内服継続されていた。2012年1月頃より嘔吐出現するも症状改善せず、同年4月に右下腹部痛が出現したため近医受診し、造影CTで右腎梗塞と診断され入院となった。入院時より著明な浮腫、低Alb血症、発熱を認めており抗生剤投与で一時改善するも微熱と炎症反応上昇を繰り返す状態であった。低蛋白血症と原因不明の炎症の精査加療目的で同年6月当院紹介受診となった。【入院後経過】蛋白漏出シンチグラフィで消化管からのRIの著明な漏出を認め、蛋白漏出性胃腸症と診断した。Alb投与、IVH管理、PSL25mgで治療開始するも低蛋白血症は改善しなかったため、ステロイドパルスを施行するも効果はなかった。持続する炎症に関しては感染症を疑い、前医も含め繰り返し血液培養するも原因菌の同定には至らず、γグロブリン、IPM/CS2gの重症感染症に準じた治療を行うも炎症所見は改善せず、全身状態は徐々に悪化し永眠された。【剖検所見】蛋白漏出性胃腸症に特徴的な絨毛の萎縮やリンパ管拡張像は認めなかった。肺、胃、回腸、結腸、直腸、腎、骨盤リンパ節、骨髄、血管内にクリプトコッカスの菌体を認め、播種性クリプトコッカス症の状態であった。【結語】クリプトコッカス菌体が血管内、リンパ管内にも存在しており、腎梗塞の既往、剖検で明らかになった肺梗塞は菌体塞栓による可能性があり、抗生剤に反応しなかった慢性持続的な炎症はクリプトコッカス菌血症と考えられた。病理での結果を踏まえて、長期PSL内服による免疫寛容の状態からクリプトコッカス感染症が発症し、蛋白漏出性胃腸症の誘因となった可能性があり、原因不明の蛋白漏出性胃腸症の病因を探る上で示唆に富んだ貴重な症例であった。
索引用語 蛋白漏出性胃腸症, 播種性クリプトコッカス症