セッション情報 一般演題

タイトル 40:

陽子線治療が著効したVp4肝細胞癌の一例

演者 井澤  直哉(獨協医科大学 消化器内科)
共同演者 飯島 誠(獨協医科大学 消化器内科), 岩崎 茉莉(獨協医科大学 消化器内科), 鈴木 統裕(獨協医科大学 消化器内科), 高橋 史成(獨協医科大学 消化器内科), 竹中 一央(獨協医科大学 消化器内科), 原 瑠以子(獨協医科大学 消化器内科), 村岡 信二(獨協医科大学 消化器内科), 有阪 高洋(獨協医科大学 消化器内科), 坪内 美佐子(獨協医科大学 消化器内科), 土田 知恵子(獨協医科大学 消化器内科), 眞島 雄一(獨協医科大学 消化器内科), 室久 俊光(獨協医科大学 消化器内科), 平石 秀幸(獨協医科大学 消化器内科)
抄録 【症例】66歳男性
【既往歴】臍ヘルニアで手術歴あり。2012年9月より慢性腎不全にて維持透析。3年前まで大酒歴あり。輸血歴なし。
【現病歴】透析開始2か月後より時々臍周囲や背部に疼痛あり、透析施行中の病院で腹部超音波と腹部CTを受け、肝硬変と少量の腹水、および肝尾状葉に8cm大の肝細胞癌を認め、門脈本幹に腫瘍栓を形成していた。精査加療目的に2012年11月当科紹介入院。
【身体所見】意識清明、貧血なし、黄疸なし。胸部:心収縮期雑音。腹部:正中に手術痕。波動触知せず、圧痛なし。左前腕に透析用シャント。
【入院時血液生化学所見】:総ビリルビン0.6 mg/dl、血清アルブミン3.5 g/dl、PT 72%、血小板数20.5万、HBs抗原陰性、HCV抗体陰性、AFP 54 ng/ml、PIVKA-II 2230 mAU/ml。
【入院後経過】切除、動注化学療法、sorafenibが検討されたが、肝機能や透析を要する慢性腎不全から困難と判断し、放射線治療が検討された。通常の照射より肝機能への影響が少なく良好な効果の期待できる陽子線治療を選択し、他院で計83.6GyEの照射が施行された。特記すべき合併症なく腫瘍は著明に縮小し、PIVKA-II も20 mAU/mlと正常化した。2013年4月の腹部超音波ではS1の腫瘍は30mmで門脈腫瘍栓は退縮し順行性の血流を認めた。6月にMRIとCTで他部位に複数の再発を認めたが7月にTACEを施行し、無症状で通院中である。
【考察】径が大きく門脈に腫瘍栓を伴う肝細胞癌は予後不良で、動注化学療法やsorafenib投与が行われるが、成績は良好ではない。本例では陽子線治療により良好な抗腫瘍効果が得られ、その後の肝内転移再発に対しても安全にTACEによる追加治療が施行可能であった。陽子線治療は現在保険適応外ではあるが、病巣のみに効率よく線量を集中できることから、良好な局所制御率と低侵襲性を併せ持つ治療法として進行肝細胞癌に対しても重要な選択肢になりうると思われる。
索引用語 陽子線, 門脈腫瘍栓