セッション情報 研修医セッション(卒後2年迄)

タイトル 64:

リザーバーポート下動注化学療法時に合併した膵膿瘍の一例

演者 熊谷   知博(湘南鎌倉総合病院消化器病エンター)
共同演者 魚嶋 晴紀(湘南鎌倉総合病院消化器病エンター), 所 晋之助(湘南鎌倉総合病院消化器病エンター), 増田 作栄(湘南鎌倉総合病院消化器病エンター), 佐々木 亜希子(湘南鎌倉総合病院消化器病エンター), 小泉 一也(湘南鎌倉総合病院消化器病エンター), 金原 猛(湘南鎌倉総合病院消化器病エンター), 賀古 眞(湘南鎌倉総合病院消化器病エンター)
抄録 【緒言】リザーバーポートによる動注化学療法は肝動脈化学塞栓療法不応例の肝細胞癌に対して有用な治療だが,効果的な薬剤投与のため,動脈塞栓による肝動脈血流改変が症例により必要となる.この際,肝細胞癌を伴う肝硬変患者は易感染性のため,塞栓術後に感染症を来した報告が認められる.この度われわれは塞栓術後に膵膿瘍を発症し,加療に苦慮した一例を経験したため報告する.【症例】75歳男性.B型肝炎を10年前に指摘され,HBs抗原陽性,HBe抗原陽性,HBV-DNA高ウイルス量のため,核酸アナログ製剤を服用中.2011年8月腹部造影CT検査で両葉に多発する肝細胞癌が指摘され,肝動脈化学塞栓療法を施行した.その後,2012年11月までに4度の肝動脈化学塞栓療法を施行するも,不応となり2013年2月動注用リザーバーポート下による動注化学療法を開始した.2013年5月血流遮断目的に左下横隔膜動脈及び左胃動脈血流遮断を行なったところ,塞栓術1週間後より発熱と左下腹部痛が出現した.腹部造影CT検査より膵尾部に8cm大のcystic lesionが認められ,上部消化管内視鏡検査は胃角部より前庭部小彎にかけて壁外性圧排像が認められた.動脈塞栓術後の仮性膵嚢胞または膵膿瘍の診断となった.抗菌薬投与を行なったが,CT画像で増大傾向となり,内視鏡下膵膿瘍ドレナージ術を施行した.経胃的に7Fr pigtailカテーテルを留置した.ドレーンチューブより無臭の白色膿汁が認められ,後日の膿汁培養からAeromonas hydrophilaが検出された.ドレナージ術後も,膿瘍残存するため,内視鏡下ネクロゼクトミー術を追加施行した.術後は膿瘍消失傾向となり,pigtailカテーテル抜去後も再燃なく経過した.【考察】肝動脈化学塞栓療法不応例に対するリザーバーポート下の動注化学療法は比較的進行した肝細胞癌例にも安全かつ効果的な治療と言える.一方で効果的な薬剤投与のための動脈塞栓術は時おり合併症を来すことが知られており,本症例の膵膿瘍を含め文献的考察をふまえて報告する.
索引用語 肝細胞癌, 膵膿瘍