セッション情報 一般演題

タイトル 88:

化学療法中に門脈ガス血症を発症し、保存的に軽快した胃小細胞癌の一例

演者 新井 裕之(千葉県がんセンター 消化器内科)
共同演者 廣中 秀一(千葉県がんセンター 消化器内科), 杉田 統(千葉県がんセンター 消化器内科), 辻本 彰子(千葉県がんセンター 消化器内科), 喜多 絵美里(千葉県がんセンター 消化器内科), 中村 奈海(千葉県がんセンター 消化器内科), 相馬 寧(千葉県がんセンター 消化器内科), 鈴木 拓人(千葉県がんセンター 消化器内科), 須藤 研太郎(千葉県がんセンター 消化器内科), 中村 和貴(千葉県がんセンター 消化器内科), 三梨 桂子(千葉県がんセンター 消化器内科), 原 太郎(千葉県がんセンター 消化器内科), 傳田 忠道(千葉県がんセンター 消化器内科), 山口 武人(千葉県がんセンター 消化器内科)
抄録 門脈ガス血症(hepatic portal venous gas:HPVG)は腸管壊死などの重篤な病態の際に認められる比較的まれな病態で、予後不良とされてきた。しかし、最近HPVGは腸管壊死のみならず多彩な病因で起こり、腸管壊死を伴わなければ保存的治療が可能な症例も報告されている。これまでに化学療法による有害事象として報告されたHPVGは検索しえた限り、8例のみである。今回、我々は化学療法後にHPVGを発症し、保存的に治療しえた胃小細胞癌症例を経験したので、文献的考察を加えて報告する。
【症例】69歳男性、大量腹水を伴う胃小細胞癌に対してカルボプラチン(CBDCA AUC5, d1)+イリノテカン(IRI 60mg/m2、d1、8、15、q4w)療法を開始した。Day6より水様便が出現し、塩酸ロペラミド2mgの投与を開始した。Day11にgrade3以上の発熱性好中球減少のため入院、G-CSF、抗生剤投与を開始した。その後、腹部膨満感が増悪し、day16に腹部単純CTにて、麻痺性イレウスによる腸管拡張と腸管嚢胞様気腫を認め、さらに腸間膜静脈内ガス、門脈内ガスを認めた。本症例は、腹膜刺激症状に乏しく、腸管壊死の可能性が低いと判断し、保存的治療を継続した。Day18に好中球はgrade2に改善し解熱した。Day26には腹部単純X-Pで小腸ガス像の改善と腸蠕動音の回復を認めたため、水分摂取を開始した。Day29より流動食を開始し、day39に退院となった。その後、腹水は消失し、外来で同療法を継続し、現在、完全寛解で生存中である。
【考察】化学療法中にHPVGを発症した報告は、これまでに8例ある。投与薬剤は、IRI 3例、IRI+CDDP 1例、CDDP+5-FU 1例、Oxaliplatin(Ox)+Cetuximab(Cet)+Bevacizumab(BV) 1例、CBDCA+Paclitaxel+BV 1例、Ox+UFT+LV+Cet 1例と、IRIやCetなどの粘膜障害を来す薬剤とBVが多い傾向にあった。消化管穿孔と診断された1例が腸管切除を行い、肝壊死を認めた1例が肝部分切除を行い、術後、回復した。5例が保存的に回復、1例が胃管壊死により死亡した。化学療法中に発症したHPVG症例は、消化管穿孔や臓器壊死がない場合には注意深い保存的治療で回復する可能性がある。
索引用語 門脈ガス血症, 化学療法