セッション情報 専修医セッション(卒後3-5年)

タイトル 24:

術前診断が困難であった膵内分泌腫瘍の1例

演者 林 可奈子(東京医科大学八王子医療センター 消化器外科・移植外科)
共同演者 高野 公徳(東京医科大学八王子医療センター 消化器外科・移植外科), 佐野 達(東京医科大学八王子医療センター 消化器外科・移植外科), 沖原 正章(東京医科大学八王子医療センター 消化器外科・移植外科), 千葉 斉一(東京医科大学八王子医療センター 消化器外科・移植外科), 河地 茂行(東京医科大学八王子医療センター 消化器外科・移植外科), 高橋 佑輔(東京医科大学八王子医療センター 消化器内科), 角谷 宏(東京医科大学八王子医療センター 消化器内科), 芹澤  博美(東京医科大学八王子医療センター 病理診断部), 島津 元秀(東京医科大学八王子医療センター 消化器外科・移植外科)
抄録 症例は63歳、女性。1年前に原因不明の重症急性膵炎で当院消化器内科で入院加療歴あり。入院時の単純CT検査で、膵炎の炎症の中心は膵頭部周囲で右腎上極までfluidを認めていたが、その際膵体部に2cm大の腫瘍性病変を認め尾側膵は委縮していた。造影CTおよびMRI検査を施行し、islet tumorやacinic cell tumorあるいは腫瘤形成性膵炎が疑われるも鑑別が困難であったため厳重経過観察とし、増大傾向なく経過された。1年が経過した時点でわずかな増大傾向を認めたため、再度造影CT、MRI、EUSおよびERCP検査を施行された。造影CTでは造影早期では正常実質よりやや濃染不良で不均一な低吸収を示し、後期相では正常実質よりやや強く濃染する所見であった。EUSでは内部に隔壁を伴う蜂巣状の嚢胞を認めSCNが疑われたが、MRI検査ではT1WI、T2WIで低信号を示す充実性腫瘤であり嚢胞成分はなく、両者の所見に乖離がみられた。ERCP検査では主膵管が膵体部で完全閉塞している所見を認め、通常型膵癌も鑑別診断として挙げられた。いずれにしても悪性腫瘍を否定することは困難であり当科紹介受診となった。追加で施行したFDG-PET/CT検査でも腫瘍に一致して集積を認めたため外科的切除の方針とした。腹腔鏡下脾温存膵体尾部切除の方針で手術を開始しまずは腫瘍の針生検を施行したが、迅速病理診断では膵悪性腫瘍と診断されたため、上腹部正中切開で開腹移行しリンパ節郭清を含めた膵体尾部切除術を施行した。永久標本による最終病理診断はG2の膵内分泌腫瘍であった。膵内分泌腫瘍は多彩な画像所見を示すことがあり、術前診断に苦慮することも多い。本症例においても術前診断は困難であったが、画像診断を駆使することで手術適応と判断し、肝転移やリンパ節転移を起こす前に根治切除が可能であった。本症例の経過と膵内分泌腫瘍の鑑別診断について文献的考察を加え報告する。
索引用語 膵内分泌腫瘍, 膵腫瘍の鑑別診断