セッション情報 | 研修医セッション(卒後2年迄) |
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タイトル | 76:C型慢性肝炎の経過観察中、胆管内乳頭状腫瘍の存在した可能性が疑われた症例 |
演者 | 原田 崇弘(東京大学 医学部附属病院 消化器内科) |
共同演者 | 花尻 和幸(東京大学 医学部附属病院 消化器内科), 浅岡 良成(東京大学 医学部附属病院 消化器内科), 近藤 祐嗣(東京大学 医学部附属病院 消化器内科), 建石 良介(東京大学 医学部附属病院 消化器内科), 佐々木 隆(東京大学 医学部附属病院 消化器内科), 伊佐山 浩通(東京大学 医学部附属病院 消化器内科), 阪本 良弘(東京大学 医学部附属病院 肝胆膵外科), 吉岡 龍二(東京大学 医学部附属病院 肝胆膵外科), 國土 典弘(東京大学 医学部附属病院 肝胆膵外科), 小池 和彦(東京大学 医学部附属病院 消化器内科) |
抄録 | 【症例】80歳女性【既往歴】1955年(23歳時)、左胸郭形成術、輸血(+) 2010年(78歳時)、早期大腸癌、他院にてポリペクトミー【現病歴】1991年より、C型慢性肝炎で当科通院中であった。2012年12月、エコー、CT上、尾状葉に長径4 cmの嚢胞性病変が認められ、CA19-9 4094と上昇しており、前年と比較して、嚢胞は明らかに増大していた。嚢胞内部に弱く不均一な増強効果を示す部分が認められ、MRIの拡散強調画像上、高信号を示した。同部で尾状葉(paracaval)の胆管が狭窄し、上流の拡張を来していた。また、胆管周囲や傍大動脈領域に腫大リンパ節を認め、18F-FDG PETでも集積があり、転移が強く疑われたが、EUS-FNAでは、癌細胞は認められなかった。元々、尾状葉(Spiegel)の胆管拡張も認められていたが、ERCPでは積極的に右肝管~総胆管への浸潤を疑わせる像は認められなかった。以上より、嚢胞腺癌が強く疑われ、2013年3月4日、当院肝胆膵外科にて、拡大左肝切除施行された。ただし、2013年2月のCTでは、嚢胞の縮小が認められており、CA19-9 444と低下していた。【病理】嚢胞内腔に黄緑色の壊死物を入れており、主病変の中枢に位置するB1に相当すると思われる胆管周囲に線維化を伴う狭窄が認められた。狭窄部よりも末梢胆管は、嚢胞状に内腔が拡張しており、拡張した胆管壁を裏打ちする上皮細胞は一部で低乳頭状を呈し、胞体内の粘液含有、軽度の核腫大が見られた。直下には卵巣様間質は見られなかった。嚢胞は平坦な上皮に裏打ちされた、単純性嚢胞の像であった。胆管上皮に軽度の構造異型や細胞異型がみられる事から、元々、胆管内乳頭状腫瘍(IPNB)が存在していた可能性が疑われた。【考察】2010年のWHO分類の改訂で、膵臓の膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)の疾患概念をカウンターパートにして、IPNBが定義された。しかし、胆道の粘液産生性腫瘍は比較的頻度が低く、詳細な病態や診断基準は明確になっていない。一方、肝内胆管癌はC型肝硬変で発症率が高いとの報告もある。本症例は、C型慢性肝炎を経過観察する上で、興味深い症例と考え報告する。 |
索引用語 | IPNB, C型肝炎 |