セッション情報 専修医セッション(卒後3-5年)

タイトル 25:

IgG4関連唾液腺炎の経過観察中に自己免疫性膵炎を発症した一例

演者 十菱 大介(東京都済生会中央病院 内科)
共同演者 岸野 竜平(東京都済生会中央病院 消化器内科), 松崎 潤太郎(東京都済生会中央病院 消化器内科), 星野 舞(東京都済生会中央病院 消化器内科), 瀧田 麻衣子(東京都済生会中央病院 消化器内科), 石山 由佳(東京都済生会中央病院 消化器内科), 酒井 元(東京都済生会中央病院 消化器内科), 岩崎 栄典(東京都済生会中央病院 消化器内科), 泉谷 幹子(東京都済生会中央病院 消化器内科), 船越 信介(東京都済生会中央病院 消化器内科), 中澤 敦(東京都済生会中央病院 消化器内科), 塚田 信廣(東京都済生会中央病院 消化器内科), 向井 清(東京都済生会中央病院 病理診断科)
抄録 【症例】64歳男性。父母が再従兄弟婚で、父方祖母、父方伯母、母方伯母が膵癌を発症している。2003年に2型糖尿病(合併症なし)を発症してインスリン投与されていた。2008年に右顎下腺腫脹を自覚して耳鼻科を受診、12月に右顎下腺摘出術を行ったところ、摘出検体の特殊免疫染色でIgG4陽性の形質細胞を多数認めて、IgG4関連リンパ上皮性唾液腺炎と病理診断された。その後、自覚症状は消失したため経過観察されていた。2013年9月上旬ころより差し込むような強い心窩部痛が出現して、夜間に頻発するため不眠が続いた。近医で鎮痛薬が処方され心窩部痛は改善したが、その頃から腰背部の鈍痛が出現して、持続するようになった。腹部エコー、造影CTで膵頭部に腫瘤が指摘され、精査目的で当院を紹介受診した。来院時の血液検査でAST 157 IU/L, ALT 248 IU/L, ALP 1351 IU/L, rGTP 1129 IU/L, T-Bil 1.1mg/dLと肝・胆道系酵素の上昇を認めた。ERCPを施行したところ、下部胆管に辺縁平滑な狭細像を認め、腫瘍または炎症による圧排が疑われたがドレナージのみ施行した。再度施行したERCPで膵管の不整狭細像を認め、造影CTで膵頭部の限局性腫大を認めていること、血液検査でIgG4が210mg/dLと高値であったこと、IgG4関連唾液腺炎の既往歴と合わせて自己免疫性膵炎と診断した。2度目のERCPの際に施行した胆管の生検、胆汁細胞診、膵管の擦過細胞診からも悪性腫瘍を疑う所見は認めなかった。プレドニゾロン30mg/dayの内服を開始し、以後は漸減しながら外来で経過を観察している。フォローアップのCT、MRCPで後腹膜線維症の所見は認めないものの背部痛の訴えは持続しており、今後も慎重な経過観察が必要である。【考察】来院時、顎下腺摘出時の詳しい病歴は十分に確認されていなかったため、当初は診断に苦慮した一例であった。膵外病変としての唾液腺炎が膵炎に5年ほど先行して認められた貴重な症例を経験したため、文献的考察も加えてここに報告する。
索引用語 自己免疫性膵炎, IgG4関連唾液腺炎