セッション情報 研修医セッション(卒後2年迄)

タイトル 58:

保存的治療にて軽快した小腸アニサキス症の1例

演者 川瀬 圭祐(東京北社会保険病院外科)
共同演者 松野 成伸(東京北社会保険病院外科), 岡村 淳(東京北社会保険病院外科), 桑原 悠一(東京北社会保険病院外科), 細井 則人(東京北社会保険病院外科), 頼木 領(東京北社会保険病院外科), 首藤 介伸(東京北社会保険病院外科), 天野 正弘(東京北社会保険病院外科), 山口 真彦(東京北社会保険病院外科), 住永 佳久(東京北社会保険病院外科)
抄録 症例は68歳、男性。受診2日前夕に生のホタルイカを食べ、前日夕より臍周囲の腹痛を自覚、当日朝下痢を一回認め、当院内科を受診した。腹部所見乏しく、急性腸炎を疑い外来観察となった。2日後嘔吐がみられ再受診し、採血にて軽度の炎症所見と脱水を認め、腹部レントゲンで拡張した小腸、CTにて十二指腸水平部から広範な小腸にかけ拡張と液貯留を認め、遠位回腸に壁肥厚とそれ以降の腸管腔虚脱、さらには右側腹部に腹水を認めた。消化管壁の造影効果が保持され、明らかな絞扼はなく、腸管壁肥厚や食餌歴などからアニサキスによる小腸イレウスと診断され入院した。腹部は全体に膨満し、腸ぜん動音の減弱、臍部右側に軽度の圧痛を認めたが、筋性防御、反跳痛はなかった。絶食、点滴にて保存的に経過観察したが、腹部症状の悪化はみられず、入院4日目腹痛軽減しCT再検したところ、小腸の拡張は軽減したが、遠位回腸の壁肥厚は残存、腹水はわずかに増加が見られた。入院5日目より食事再開し腹痛も経過して8日目に退院となった。なお、アニサキス抗体検査は陽性であった。消化管アニサキス症の殆どは胃アニサキス症であり、小腸アニサキス症は比較的稀で、腸重積や腹膜炎症状などを伴う場合開腹手術となることがあるが、虫体は7日程度で死滅するため、食餌歴などから診断が確定されれば経過観察で治癒するとされる。本疾患では病歴の詳細な聴取による診断および臨床症状の変化やCTなどによる詳細な経時的経過観察が重要である。
索引用語 アニサキス, イレウス