共同演者 |
小林 克也(東京逓信病院 消化器内科), 田顔 夫佑樹(東京逓信病院 消化器内科), 水谷 浩哉(東京逓信病院 消化器内科), 大久保 政雄(東京逓信病院 消化器内科), 関川 憲一郎(東京逓信病院 消化器内科), 光井 洋(東京逓信病院 消化器内科), 橋本 直明(東京逓信病院 消化器内科), 山口 肇(東京逓信病院 内視鏡センター), 奥田 純一(東京逓信病院 消化器外科), 寺島 裕夫(東京逓信病院 消化器外科), 岸田 由起子(東京逓信病院 病理科), 田村 浩一(東京逓信病院 病理科) |
抄録 |
症例は67歳男性。2013年8月、黒色便を主訴に当院受診。貧血(Hb 8.4 g/dl)を認め、緊急入院となった。入院後すぐに吐血あり上部消化管内視鏡施行したところ、十二指腸下行脚に周堤を伴う潰瘍性病変を認めた。同部が出血源でありclippingによる止血術を行った。周堤を伴う潰瘍性病変は十二指腸潰瘍としては部位、形態共に非典型的であり原発性十二指腸癌が考えられた。CTで十二指腸壁肥厚を認めるが特に膵臓に腫瘍性病変はなく、リンパ節腫大もなかった。MRCPで胆管、膵管ともに正常であった。後日施行した同部よりの生検で腺癌と判明した。以上より切除可能原発性十二指腸癌と診断し、外科手術の方針となった。同年9月、幽門輪温存膵頭十二指腸切除術施行した。術中、十二指腸下行脚から膵臓に連続する硬い腫瘍性病変を触知し、その時点で膵癌の十二指腸浸潤の可能性を認識するに至った。固定標本でも、膵頭部の腫瘍が十二指腸粘膜に浸潤し潰瘍を形成する形態であり、膵臓癌の十二指腸浸潤であった。最終病理診断はtubular adenocarcinoma(por), INF γ, ly2, v3, ne0, mpd(-), s(-), rp(-), ch(-), du(+), pv(-), a(-), pl(-), pcm(-), bcm(-), dpm(-), n1(5/29)であった。今後、術後化学療法を行っていく予定である。本症例は術前画像評価では十二指腸癌の診断であったが、実際は膵癌の十二指腸浸潤であった。発症が消化管出血であったこと、進展様式としての十二指腸浸潤が著明であったこと、術前画像で膵頭部所見の読影が困難であったことなどが鑑別を困難にした理由と考えられた。消化管出血で発症した膵癌を切除し得た貴重な症例と考えられ、文献的考察を加え、報告する。 |