セッション情報 一般演題

タイトル 45:

ダナパロイドナトリウムが奏功した門脈血栓症の一例

演者 佐藤 悦基(昭和大学 医学部 内科学講座 消化器内科学部門)
共同演者 山宮 知(昭和大学 医学部 内科学講座 消化器内科学部門), 石井 優(昭和大学 医学部 内科学講座 消化器内科学部門), 野本 朋宏(昭和大学 医学部 内科学講座 消化器内科学部門), 北村 勝哉(昭和大学 医学部 内科学講座 消化器内科学部門), 吉田 仁(昭和大学 医学部 内科学講座 消化器内科学部門)
抄録 症例は72歳女性,右季肋部痛と発熱を主訴に来院.HBVキャリアで既往に関節リウマチがある.2013年3月より右季肋部痛が出現し,徐々に増悪し,発熱も出現したため,約1週間後に当科を受診した.来院時,38℃の発熱があり,右季肋部に圧痛を認めた.血液検査所見ではWBC15500/µl,CRP27.09mg/dlと高度炎症を,T-Bil1.5mg,ALP1476IU/l,γ-GTP184IU/lと肝胆道系酵素の上昇を認め,胆道感染が最も疑われたが,USやCT検査で胆道感染を疑う所見に乏しく,入院となった【入院後経過】第2病日に右季肋部痛が増強し,40℃の発熱が出現し悪寒,戦慄を伴った.CTを再検したところ,肝右葉後区域の門脈血流が消失し,門脈~上腸管膜静脈にかけて広範な血栓形成を認めた.入院時の血液培養からE-coliが検出されたため,敗血症と診断し,抗菌薬に加え,免疫グロブリン製剤を投与した.さらに門脈血栓症に対しては,DICの併発もあり,ダナパロイドナトリウムの投与を開始した.その後も強い腹痛は改善せず経過し,第5病日に,収縮期血圧が70台,脈拍は130/分とショック状態に陥った.敗血症性ショックと判断し,昇圧剤投与およびエンドトキシン吸着療法(PMX)を開始した.その後,徐々に感染のコントロールが得られ,昇圧剤も離脱し得た.第14病日のCTでは,血栓の著明な縮小および門脈右枝の血流の再開を認めた.ダナパロイドナトリウムは14日間の投与で終了とし,ワーファリンによる抗凝固療法に切り替えたが,再燃は認めず,現在は外来にて経過観察中である.【考察】非常に強い腹痛をきたした門脈血栓症に対しダナパロイドナトリウムが奏功した一例を経験した.門脈血栓は,敗血症に由来する可能性が最も考えられたが,感染源は不明であった.ダナパロイドナトリウムは出血などの副作用をきたしにくく,欧米では肺血栓塞栓症や深部静脈血栓症においても有効性が報告されている.本邦ではDICのみが適応となっているが,門脈血栓症においても有用な治療薬となりうる可能性が示唆された.
索引用語 門脈血栓症, ダナパロイドナトリウム