セッション情報 専修医セッション(卒後3-5年)

タイトル 8:

出血性十二指腸潰瘍に続発した虚血性腸炎の一例

演者 加藤 恵理子(群馬県済生会前橋病院 消化器内科)
共同演者 桑子 智人(群馬県済生会前橋病院 消化器内科), 矢田 豊(群馬県済生会前橋病院 消化器内科), 仁平 聡(群馬県済生会前橋病院 消化器内科), 山崎 節生(群馬県済生会前橋病院 消化器内科), 椎名 啓介(群馬県済生会前橋病院 消化器内科), 平野 裕子(群馬県済生会前橋病院 消化器内科), 蜂巣 陽子(群馬県済生会前橋病院 消化器内科), 大山 達也(群馬県済生会前橋病院 消化器内科), 田中 良樹(群馬県済生会前橋病院 消化器内科), 吉永 輝夫(群馬県済生会前橋病院 消化器内科), 中里 健二(群馬県済生会前橋病院 外科 腹腔鏡外科センター), 藍原 龍介(群馬県済生会前橋病院 外科 腹腔鏡外科センター), 細内 康男(群馬県済生会前橋病院 外科 腹腔鏡外科センター), 西田 保二(群馬県済生会前橋病院 外科 腹腔鏡外科センター), 山田 正信(群馬大学 医学部 病態制御内科学)
抄録 【症例】68歳男性 【主訴】下血 【現病歴】糖尿病、糖尿病性腎症(維持透析中)、左下肢切断術後(糖尿病性足壊疽)、高血圧の診断で近医にて加療されていた。平成23年10月下血を認め当科受診。緊急上部内視鏡検査にて十二指腸球部前壁に露出血管を伴う出血性潰瘍(A1 stage)を認め、高張Naエピネフリン(HSE)局注後クリップにて止血した。経過良好で退院したが、退院翌日より全身倦怠感を認め、当科再受診。貧血進行と黒色便も認めることから精査目的に当科へ再入院した。【経過】入院後、黒色便は少量持続していたが、バイタルサインは安定していたため、絶食・補液、RCC輸血にて保存的に加療した。入院7時間後より頻脈、血圧低下を認め、黒色便も増加。緊急上部内視鏡検査にて十二指腸球部前壁のA1潰瘍より再出血を認め、HSE局注を再施行。その後も黒色便が持続し、透析用シャントは閉塞した。さらに入院第2病日より腹痛・粘血便が出現。緊急腹部造影CT検査にて、下行結腸~S状結腸にびまん性の壁腫脹、周囲脂肪織への炎症波及を認めた。消化管穿孔や、上・下腸間膜動脈に明らかな異常は認めなかった。入院第5病日に施行した下部内視鏡検査では下行結腸~S状結腸にびまん性全周性に発赤した粘膜腫脹を認め、S状結腸に縦走潰瘍を認めた。腹痛、下血の主因は、出血性十二指腸潰瘍を契機とした虚血性腸炎と考えられた。その後も絶食・補液、輸血、抗生剤投与にて保存的に加療したが、以後も下血は持続し、再度の下部内視鏡検査にて新たに壊死性腸炎の所見も認めた。さらにDICスコアの上昇も認め、入院第41病日に外科転科の上、回腸人工肛門造設術(双孔式)を施行した。以後、一時、再下血を認めるも改善し、経過良好にて退院した。【考察】糖尿病性血管障害を背景とし、出血性十二指腸潰瘍に続発した虚血性腸炎例に対し、外科的治療を施行し軽快した。糖尿病患者の高齢化に伴い、本例のような虚血性腸炎に遭遇する機会は稀ではない。迅速な診断と治療が重要と思われ、報告する。
索引用語 虚血性腸炎, 出血性十二指腸潰瘍