セッション情報 研修医セッション(卒後2年迄)

タイトル 82:

難治性肝性胸水に対して胸腔-静脈シャントが有効であった一例

演者 西川 圭太(東海大学内科学系 消化器内科)
共同演者 広瀬 俊治(東海大学内科学系 消化器内科), 荒瀬 吉孝(東海大学内科学系 消化器内科), 加川 建弘(東海大学内科学系 消化器内科), 白石 光一(東海大学内科学系 消化器内科), 峯 徹哉(東海大学内科学系 消化器内科)
抄録 症例はB型肝硬変(Child-Pugh分類B、score8)、肝細胞癌を有する60歳代男性。1997年に肝硬変と診断され、2010年に肝癌を発症し、これまでTAE、RFAを繰り返している。2011年3月頃から腹水貯留、右胸水貯留が出現し始めた。胸水の細菌培養検査は陰性、生化学検査では漏出性、細胞診で悪性所見は陰性であり、肝性胸腹水と診断した。塩分制限、利尿剤治療で奏功せず次第に胸腹水貯留による呼吸困難や食欲低下などQOLの著しい低下が見られた。週に1-2回の胸水穿刺を要する状態となり、難治性の診断となった。胸水の排液後にCTを撮影すると、穿刺後には胸水と共に腹水も大量に減少していることが明らかとなり、横隔膜を介して腹腔と胸腔が連絡しているものと診断し、入院の上でDenver Shuntにより胸腔‐静脈(右鎖骨下静脈)シャント造設術を行った。術後、心不全やDIC管理を慎重に行った。静脈内カテーテル先端が奇静脈内に迷入したために透視下での修正を要したが、それ以外に合併症は生じず、尿量が増加し呼吸困難も消失、胸水穿刺の必要性もなくなり術後13日で退院した。退院後には胸部レントゲンで胸水の減少が確認され、約3か月経過した現在まで胸腔穿刺を行わずにシャントトラブルもなく外来通院を続けている。また、入院時の低ナトリウム血症と低アルブミン血症が、各々128から140mEq/L、2.4から3.2g/dlに改善している。本治療によりChild-Pugh scoreは2点改善し肝機能の改善にも寄与している。肝硬変による肝性胸水に対しては利尿剤治療や胸腔ドレナージが行われることが多いが難治性となった場合は著しいQOLの低下を招き生命予後への影響も大きい。今回我々は胸腔-静脈シャント術を施行し良好な肝性胸水の管理を得た。示唆に富む症例として報告する。
索引用語 肝性胸水, デンバーシャント