セッション情報 一般演題

タイトル 77:

クローン病に合併した痔瘻癌の2例

演者 佐川 俊彦(群馬大学医学部付属病院 第一内科)
共同演者 石原 眞悟(国立病院機構沼田病院), 富澤 琢(群馬大学医学部付属病院 光学医療診療部), 安岡 秀敏(群馬大学医学部付属病院 第一内科), 栗林 志行(群馬大学医学部付属病院 第一内科), 水出 雅文(群馬大学医学部付属病院 第一内科), 下山 康之(群馬大学医学部付属病院 第一内科), 河村 修(群馬大学医学部付属病院 第一内科), 草野 元康(群馬大学医学部付属病院 光学医療診療部), 山田 正信(群馬大学医学部付属病院 第一内科)
抄録 【背景】本邦ではクローン病(以下CD)のcolitic caancer報告例は欧米に比べて少なかったが、近年、報告例が増加している。【症例1】症例は40代、女性。1990年に小腸大腸型CD発症。狭窄にて2回手術、2009年にIFX導入。その後痔瘻、肛門周囲膿瘍を繰り返すようになり2010年にIFXを倍量に変更。2012年12月より効果減弱。2013年3月肛門痛、肛門狭窄、腹部膨満で入院、肛門拡張術+seton法施行し、その時の生検で痔瘻癌と診断。【症例2】症例は50代、男性。1986年に痔瘻を伴う小腸大腸型CD発症。2006年にIFX導入。痔瘻に対するIFXの効果減弱から2013年4月にIFX倍量。同年6月に肛門違和感、肛門痛、瘻管からの粘液増加と血液混入を認めCS、MRIで痔瘻癌の直腸浸潤(tub2)が疑われた。【考察】CDの予後を規定する因子は悪性疾患と重症CDの合併症とされている。CDにおける痔瘻癌の合併は欧米では少なく、日本において報告が多いとされている。その痔瘻癌の症状は(1)瘻管からのゼリー状物質の分泌、(2)瘻管からの出血、(3)直腸・肛門狭窄症状の出現や悪化、(4)疼痛、(5)硬結・腫瘤の出現とされる。しかし、(1)は痔瘻癌に特徴的だが全症例の1割程度にしかみられず、(1)以外はCDの症状としても矛盾しないため、早期発見が困難とされている。また、本邦ではCDにおける生物学的製剤の導入率が他国に比べ高いとされる。その生物学的製剤の効果が減弱した場合には、感染症の合併、狭窄病変の存在、薬剤に対する抗体産生が一般的に考えられる。今回我々は生物学的製剤の効果減弱後に診断された痔瘻癌の2例を経験した。本邦においては痔瘻癌が増加していることと生物学的製剤の導入症例が多いことを考慮すると痔瘻に対する生物学的製剤の効果減弱は痔瘻癌の発生を鑑別すべき状態と考えられる。
索引用語 クローン病, 痔瘻癌