セッション情報 一般演題

タイトル 71:

イマチニブ投与後に胸膜炎・膿胸を発症するも著効した切除不能巨大食道GISTの一例

演者 河村 貴広(横浜市立みなと赤十字病院)
共同演者 浅川 剛人(横浜市立みなと赤十字病院), 金城 美幸(横浜市立みなと赤十字病院), 高浦 健太(横浜市立みなと赤十字病院), 西尾 匡史(横浜市立みなと赤十字病院), 勝倉 暢洋(横浜市立みなと赤十字病院), 小橋 健一郎(横浜市立みなと赤十字病院), 橋口 真子(横浜市立みなと赤十字病院), 先田 信哉(横浜市立みなと赤十字病院), 有村 明彦(横浜市立みなと赤十字病院), 熊谷 二朗(横浜市立みなと赤十字病院)
抄録 【症例】67歳女性【既往歴】特記事項なし【現病歴・経過】2012年3月発熱・咳嗽・嚥下困難が出現し、当院を受診した。CTで縦隔下部に11cm大の内部不均一な不整形腫瘤を認め、上部消化管内視鏡で下部食道に突出し内腔を占拠する腫瘍を認めた。腫瘍そのものが食道に露出し、通常の鉗子生検検体でGISTと診断した。腫瘍サイズから悪性と考えられたが、大動脈・心臓・肺と広く接し切除不能と判断、イマチニブでの化学療法を開始した。治療開始21日目に突然胸痛と高熱が出現、左大量胸水を認め、黄色混濁した滲出性胸水で、胸膜炎と診断した。治療開始前と比較すると腫瘍は半分以下に縮小し内部は低濃度化し液状変性と考えられた。イマチニブにより腫瘍が急速に壊死し胸腔に破綻、壊死物質が漏出し胸膜炎を発症したものと推測された。経過中、化膿性膿胸にもなったが、約2ヶ月間の胸腔ドレナージ及び抗生剤治療により改善した。イマチニブは奏功していると判断し胸膜炎・膿胸治療中も投与を継続した。以後胸膜炎の再燃なく経過し、治療開始20か月の時点でも治療効果は持続し、食道内病変は瘢痕消失、CT上も腫瘍は著明に縮小した。現在も特に自覚症状なくイマチニブを継続し外来通院中である。【考察】切除不能GISTの治療はチロシンキナーゼ阻害薬であるイマチニブが第一選択である。しかし、イマチニブはその急速で高度な抗腫瘍効果から特異な有害事象を生じることがあり、その代表が腫瘍壊死からの出血や消化管穿孔である。腹腔内GIST症例でイマチニブ投与開始後に腹腔内出血を来した症例が報告されているが、食道は消化管GIST中で稀な発生部位であるため有害事象についての報告は乏しい。これまでに胸膜炎や胸腔内出血の報告はない。今回我々は、イマチニブ投与開始後3週目で腫瘍の急速な縮小に伴い胸膜炎を発症したものの著効した切除不能食道GIST症例を経験した。示唆に富む症例と思われ報告する。
索引用語 切除不能食道GIST, イマチニブ