セッション情報 | 研修医セッション(卒後2年迄) |
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タイトル | 54:高齢男性に発症した薬剤起因性自己免疫性肝炎の1例 |
演者 | 宗友 洋平(東京慈恵会医科大学内科学講座 消化器・肝臓内科) |
共同演者 | 松井 寛昌(東京慈恵会医科大学内科学講座 消化器・肝臓内科), 石田 仁也(東京慈恵会医科大学内科学講座 消化器・肝臓内科), 天野 克之(東京慈恵会医科大学内科学講座 消化器・肝臓内科), 上竹 慎一郎(東京慈恵会医科大学内科学講座 消化器・肝臓内科), 有廣 誠二(東京慈恵会医科大学内科学講座 消化器・肝臓内科), 穗苅 厚史(東京慈恵会医科大学内科学講座 消化器・肝臓内科), 石川 智久(東京慈恵会医科大学内科学講座 消化器・肝臓内科), 高木 一郎(東京慈恵会医科大学内科学講座 消化器・肝臓内科), 田尻 久雄(東京慈恵会医科大学内科学講座 消化器・肝臓内科) |
抄録 | 【緒言】薬剤起因性自己免疫性肝炎(AIH)の概念は1971年Reynoldsらが下剤として繁用されていたoxyphenisatinによるルポイド肝炎を報告したことに始まり,その後種々の薬剤に起因するAIHが報告されている.しかし,薬剤起因性AIHにおいて惹起される自己免疫現象と,肝細胞障害の機序は未だ十分解明されていない.今回我々は,スタチン製剤内服後に発症したと思われる薬剤起因性AIHの1例を経験したので報告する.【症例】症例は74歳,男性.2009年より脂質異常症に対して内服加療中であった.2012年3月に間質性肺炎と診断されPSL投与を開始した.同時期よりスタチン製剤の副作用と思われる下肢筋痙攣が出現したため,脂質異常症治療薬を4回変更するも症状改善せず,PSL,脂質異常症治療薬を含め薬剤は全て中止となった.その後,AST 703 IU/L,ALT 665 IU/Lと肝障害が出現したが,薬物性肝障害の疑いで経過観察となっていた.一時的に肝障害は改善傾向であったが,2013年8月より再び増悪を認めたため,精査加療目的にて10月に当院紹介受診,入院となった.血液検査ではAST 441 IU/L,ALT 350 IU/L,T-Bil 2.4 mg/dl,ALP 464 IU/L,γ-GTP 158 IU/L,IgG 2314 mg/dl,抗核抗体 160倍,HLA DR4 陽性であった.肝生検では門脈域の線維性拡大,interface hepatitis,形質細胞を含む炎症細胞浸潤,肝細胞のロゼット形成を認め,AIHと診断した.PSL 40mg/dayより投与開始し,血液検査所見の改善を認め,現在PSL漸減中である.【考察】スタチン製剤は何らかの遺伝的背景を有する患者では薬剤起因性AIHを引き起こす可能性があるとの報告がある.本症例は,数種類のスタチン製剤の内服後より肝障害が出現し,内服中止後も改善認めなかった.AIH国際診断基準スコアで13点(AIH,probable)であり,PSL投与にて著明な改善を認めた.これらの経過と所見から,本症例はスタチン製剤に起因すると思われる薬剤起因性AIHと診断した.【結語】高齢男性に発症した薬剤起因性自己免疫性肝炎の1例を経験した.稀な症例と考え報告した. |
索引用語 | 自己免疫性肝炎, 脂質異常症 |