セッション情報 研修医セッション(卒後2年迄)

タイトル 46:

閉塞性黄疸を来した十二指腸濾胞性リンパ腫の1例

演者 佐藤 慧(国立病院機構災害医療センター 消化器内科)
共同演者 田中 匡実(国立病院機構災害医療センター 消化器内科), 林 昌武(国立病院機構災害医療センター 消化器内科), 島田 祐輔(国立病院機構災害医療センター 消化器内科), 原田 舞子(国立病院機構災害医療センター 消化器内科), 佐々木 善浩(国立病院機構災害医療センター 消化器内科), 上市 英雄(国立病院機構災害医療センター 消化器内科), 平田 啓一(国立病院機構災害医療センター 消化器内科), 川村 紀夫(国立病院機構災害医療センター 消化器内科)
抄録 【症例】70歳代、男性【主訴】黄疸、食欲低下【現病歴】2012年4月に腹部膨満感を主訴とし肝膿瘍の診断で当科入院。入院時に行った上部消化管内視鏡検査で十二指腸球部から下行脚にかけ白色顆粒状隆起病変と下行脚に陥凹を伴う隆起性病変を認めた。一方、腹部CTでは腸間膜に多発する軟部陰影を認め一部腹膜の肥厚も認め悪性リンパ腫が疑われた。カプセル内視鏡と下部消化管内視鏡検査で小腸・大腸粘膜にも同様の病変が認められた。後日Vater乳頭周囲より採取した組織には、びらん性変化を伴った十二指腸粘膜間質に充血と形質細胞、リンパ球の浸潤を認めた。さらにCD20(+)、CD79a(+)、CD3(-)、CD45RO(-)、CD5(-)、CD10(+)、bCl-2(+)を示しており、Bernard分類Grade1相当の十二指腸濾胞性リンパ腫と診断した。血液内科へ紹介したが、高齢であることやご本人の希望もあり積極的な治療はせずに経過観察となっていた。2013年8月下旬に黄疸が出現し当科受診。精査の結果、十二指腸病変の増大により十二指腸狭窄と乳頭浸潤による閉塞性黄疸と診断し当科入院となった。【経過】入院後内視鏡的なドレナージを試みたが困難であり、PTCDによる経皮的胆道ドレナージを行った。状態安定した後PTCDと内視鏡を用いて胆管と十二指腸にメタリックステントを同時に挿入した。その後、黄疸は軽快し食事摂取できるまでになり自宅退院となった。【考察】消化管リンパ腫は節外性リンパ腫の30~50%を占めるが全消化管悪性腫瘍における頻度は1~10%と比較的稀な疾患である。好発年齢は50代後半であり性差はない。腸管濾胞性リンパ腫に対する治療は、リンパ節性濾胞性リンパ腫に準じて行われることが多いが非常に稀な疾患であることもあり、標準的な治療法は確立されていない。多くの症例では腫瘍の増大速度が遅く緩徐な経過をたどる。さらに化学療法による治療奏功率が高いにも関わらず再発率が高いため、無症状例ではwatch and waitが治療選択されていることも多い。十二指腸濾胞性リンパ腫は稀な疾患であるのに加え、腫瘍の増大による閉塞性黄疸を来した非常に稀な症例を経験したので報告する。
索引用語 十二指腸濾胞性リンパ腫, 閉塞性黄疸