セッション情報 研修医セッション(卒後2年迄)

タイトル 53:

胆管微小過誤腫に併存した肝未分化癌の1例

演者 白石 夏太郎(東大宮総合病院 消化器内科)
共同演者 市原 広太郎(東大宮総合病院 消化器内科), 安達 哲史(東大宮総合病院 消化器内科), 村田 継佑(東大宮総合病院 消化器内科), 江川 優子(東大宮総合病院 消化器内科), 鳥谷部 武志(東大宮総合病院 消化器内科), 南雲 大暢(東大宮総合病院 消化器内科), 齋藤 訓永(東大宮総合病院 消化器内科), 多田 正弘(東大宮総合病院 消化器内科), 風間 博正(東大宮総合病院 消化器内科), 金 達浩(東大宮総合病院 外科), 小川 史洋(東大宮総合病院 病理診断科), 神田 大輔(東大宮総合病院 総合内科)
抄録 症例は,89歳男性。平成24年6月より呼吸苦,顔面と両側下腿の浮腫出現。その後も呼吸苦が改善せず同月当院救急搬送,入院となった。腎機能障害のため腹部単純CT,エコーを行い,肝辺縁の不整,著明な胸腹水貯留,肝内大小不同の腫瘤状陰影が多数認められた。肝癌,肝硬変に伴う腹水貯留と考えられた。Child-Pugh分類C(10点)であり,高齢の肝不全症例のため,積極的な治療介入は困難と判断。症状緩和目的で腹水コントロールを中心に加療を行った。利尿薬投与や腹水穿刺排液を施行したが,全身状態は徐々に悪化し,第11病日に永眠された。家族の承諾により病理解剖を行った。肉眼的に肝臓全域にわたり直径25mm程度のまでの腫瘍性病変がびまん性に多数認められた。組織学的に腫瘍細胞は胞体が乏しく,短紡錘形から類円形の核を有したN/C比が極めて高い腫瘍細胞であり,充実性に増殖,多数の破骨細胞様腫瘍細胞の混在が見られる所見であった。組織像のみでは原発性肝癌と診断困難な未分化癌に相当する像であった。非腫瘍部の肝組織では門脈域の線維性拡大は認められたが,線維性隔壁のような明らかな肝硬変の所見は認められず,活動性の炎症性変化にも乏しい所見であった。しかし,多数の門脈域辺縁部では胆管微小過誤腫が認められた。よって本症例は多発した胆管微小過誤腫が背景に併存する肝原発未分化癌と考えられた。胆管微小過誤腫は臨床症状がみられず,経過観察可能な病変である。しかし,胆管微小過誤腫に併存した胆管細胞癌,胆管細胞癌と肝細胞癌の重複癌症例も稀ではあるが報告されている。本症例も貴重な症例であると考え,若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 肝未分化癌, 胆管微小過誤腫