セッション情報 |
一般演題
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タイトル |
69:ヘリコバクターピロリ菌感染による逆流性食道炎および胃悪性腫瘍(胃がん・MALTリンパ腫)への影響
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演者 |
小林 栄孝(御成橋栄クリニックDELIMITERNTT東日本伊豆病院) |
共同演者 |
松浦 貴彦(御成橋栄クリニックDELIMITERNTT東日本伊豆病院) |
抄録 |
【目的】Helicobacter pylori感染率は40歳以上で高率となる一方,若年層では低下が認められている。また逆流性食道炎におけるH. pylori 感染の役割はさまざまな報告がなされているが,逆流性食道炎の発生においては抑制的に働くことが明らかにされている。また、胃癌発生においてはH. pylori感染による萎縮性胃炎が一因子と考えられている。我々は当院で施行した企業検診において、H. pylori 感染の有無に対する、逆流性食道炎及び胃悪性腫瘍(胃がん・MALTリンパ腫)との関係を検討した。【方法】我々は2005年11月から2006年10月の間に同一企業において検診を受けた21~60歳の12,668人を対象とし,全例に血清H. pylori 抗体検査,上部消化管内視鏡検査を施行した。逆流性食道炎の分類についてはLA分類(A~D)を用いた。血清H. pylori 抗体検査のカットオフ値は,10U/mLで陽性とした。内視鏡的生検による病理学的診断にて胃悪性腫瘍と診断された患者に対しH. pylori 感染の有無について検討した。【成績】逆流性食道炎の頻度については、H. pylori 陰性例12.16%(926/7,609)、H. pylori 陽性例5.77%(292/5,059)と、H. pylori 陰性例で有意に高かった。しかしながらH. pylori 陰性例と陽性例における逆流性食道炎grade分類の頻度を比較したところ、逆流性食道炎の重症度については、H. pylori 陰性例よりもH. pylori 陽性例においてgradeが高いということが明らかにされた。上部消化管内視鏡検査による胃悪性腫瘍(胃がん・MALTリンパ腫)発見率は全体の0.1%(13/12668)であり、その内のH. pylori 陽性率は84.6%(11/13)、H. pylori 陰性率は15.3%(2/13)と、H. pylori 陽性例が有意に高かった。【結論】逆流性食道炎の発生頻度はH. pylori 感染者で有意に低かったが,H. pylori 感染が逆流性食道炎の重症度をより増悪させている可能性が示唆された。また胃悪性腫瘍に対しH. pylori 感染が発症因子である可能性が示唆され、H. pylori 除菌治療は胃悪性腫瘍発症に対して、一部の症例には予防になりうると考えられた。 |
索引用語 |
Helicobacter pylori 感染, 逆流性食道炎 |