セッション情報 研修医セッション(卒後2年迄)

タイトル 55:

アルコール多飲患者に発症した変異ウイルスを伴うde novo B型劇症肝炎の一例

演者 森川 裕史(筑波記念病院 消化器内科)
共同演者 添田 敦子(筑波記念病院 消化器内科), 小林 真理子(筑波記念病院 消化器内科), 越智 大介(筑波記念病院 消化器内科), 杉山 弘明(筑波記念病院 消化器内科), 本橋 歩(筑波記念病院 消化器内科), 設楽 佐代子(筑波記念病院 消化器内科), 池澤 和人(筑波記念病院 消化器内科), 中原 朗(筑波記念病院 消化器内科), 臺 雄一(筑波記念病院 病理), 八子 徹(とき田クリニック), 岡本 宏明(自治医科大学 感染・免疫学講座ウイルス学部門)
抄録 【症例】60歳代、男性【既往歴】糖尿病、30歳代に肝疾患で入院し肝生検を施行(詳細不明)。【現病歴】糖尿病のコントロールは不良であった。日本酒2000ml、焼酎2000ml、ビール350mlを毎日飲酒し、1ヵ月前からは体調不良のためビール350mlへ減量していた。2013年6月、気分不快と倦怠感を主訴に前医を受診し、高度肝障害を認め当院へ救急搬送となった。【入院後経過】当院初診時、AST1581IU/l、ALT2032IU/l、γGTP303IU/l、T-Bil18.7mg/dl、PT24%、HBVマーカーはHBsAg(+)、Anti-HBs(+)、HBeAg(+)、IgM anti-HBc(-)、anti-HBc(+)であった。病態の主因は重症型アルコール性肝炎と考え、安静・ビタミンK投与・G-I療法を行うも、2病日に羽ばたき振戦が出現した。ステロイドパルス療法を開始したが意識状態に改善はみられず、5病日から血漿交換を導入した。7病日には急性腎不全を発症し、9病日目に深昏睡、10病日に死亡確認となった。家族の同意を得て、肝ネクロプシーを施行した。【病理結果】壊死性炎症性反応が均一にみられ、肝小葉の巣状壊死を多数伴った古典的急性肝炎像であった。門脈周囲にはF3-4相当の線維化が認められた。肝細胞周囲線維化もみられるが、脂肪化がほとんどみられず、アルコール性肝炎は否定的であった。【遺伝子検査】当院初診時のHBV DNA(RT-PCR)は6.5LC/ml、遺伝子型はC型(C2)であった。2種類のHBVを分離し、大半は病原性の少ないと考えられるpreS1-146塩基欠損HBVであったが、病原性のあるpreS1-非欠損HBVをわずかながら(1-10%)検出した。【考察】重症アルコール肝炎と診断し加療するも、その後の病理および遺伝子学的検索の結果、遺伝子変異を伴うde novo B型肝炎の劇症化例と診断し得た興味ある症例である。
索引用語 de novo B型肝炎, 劇症肝炎