セッション情報 研修医セッション(卒後2年迄)

タイトル 42:

肥満に伴う巨大食道裂孔ヘルニア付近の胃粘膜傷害(Cameron lesion)による慢性鉄欠乏性貧血の一例

演者 宇賀神 ららと(自治医科大学付属病院 消化器肝臓内科)
共同演者 矢野 智則(自治医科大学付属病院 消化器肝臓内科), 北村 絢(自治医科大学付属病院 消化器肝臓内科), 井野 裕治(自治医科大学付属病院 消化器肝臓内科), 牛尾 純(自治医科大学付属病院 消化器肝臓内科), 三浦 義正(自治医科大学付属病院 消化器肝臓内科), 林 芳和(自治医科大学付属病院 消化器肝臓内科), 佐藤 博之(自治医科大学付属病院 消化器肝臓内科), 砂田 圭二郎(自治医科大学付属病院 消化器肝臓内科), 山本 博徳(自治医科大学付属病院 消化器肝臓内科), 菅野 健太郎(自治医科大学付属病院 消化器肝臓内科)
抄録 【症例】42歳、男性【主 訴】体動時のめまい、ふらつき【現病歴】生来健康で20歳のころは体重80kg(BMI 28)程度であったが、初めて健診で貧血を指摘された30歳頃には、体重94kg(BMI 33)に増加していた。近医の上下部消化管内視鏡検査で出血をきたす病変を認めず、鉄剤内服で経過観察されていたが、貧血が持続するため、35歳時に小腸精査目的に当科紹介となった。ダブルバルーン小腸内視鏡検査(DBE)で小腸に血管性病変Type 1aを複数認めたため、貧血の原因である可能性があると考え電気焼灼を行った。しかし、鉄剤中断により再び貧血が悪化したため、カプセル内視鏡やDBE、EGDを含めた消化管精密検査を再検したが、胃内に浅いびらんや潰瘍がわずかに認めることがあるものの貧血を来す原因としてはとらえず、出血源は特定できなかった。その後はヘモグロビン値を維持するように鉄剤内服を増減しつつ治療継続していたが、入院1年前の41歳時には定期的な鉄剤の静脈注射が必要となった。さらに、ヘモグロビン値を維持できなくなって、Hb:5.2 g/dlと高度の貧血を来したため、入院となった。【経過】入院時の体重は109kg(BMI 38.3)まで増加しており、CTで巨大食道裂孔ヘルニアを認め、EGDで食道裂孔貫通部にあたる胃体中部付近の胃粘膜にびらんと潰瘍を認めた。Cameron lesionに伴う慢性貧血と診断し、鉄剤に加えPPIを併用したところ、貧血は速やかに改善した。【考察】Cameron lesionとは巨大食道裂孔ヘルニアの食道裂孔貫通部胃粘膜に生じる限局性胃粘膜びらんまたは潰瘍病変のことを指す。本例では体重の増加に伴い食道裂孔ヘルニアが巨大化し 胃酸・圧負荷が増大して貧血を増悪させたと考えられた。Cameron lesionは稀な病態ではないが、胃酸に加え機械的刺激が原因のため改善増悪を繰り返すが、潰瘍形成の認められない時期もあり、診断に難渋することもある。
索引用語 大食道裂孔ヘルニア, 高度肥満症