セッション情報 研修医セッション(卒後2年迄)

タイトル 44:

早期胃癌ESD中に頚部食道穿孔をきたした1例

演者 山口 晴臣(東京大学医学部附属病院 消化器内科)
共同演者 新美 惠子(東京大学医学部附属病院 消化器内科DELIMITER東京大学医学部附属病院 光学医療診療部), 武田 剛志(東京大学医学部附属病院 消化器内科), 小田島 慎也(東京大学医学部附属病院 消化器内科), 山道 信毅(東京大学医学部附属病院 消化器内科), 藤城 光弘(東京大学医学部附属病院 消化器内科DELIMITER東京大学医学部附属病院 光学医療診療部), 小池 和彦(東京大学医学部附属病院 消化器内科)
抄録  症例は88歳女性。ネフローゼ症候群にてステロイド長期内服中(PSL4mg/日)であった。2013年8月健診EGDにて幽門輪後壁に20mm大の扁平隆起を指摘、生検にてadenocarcinoma(tub1)と診断され、当科紹介となった。当科EGDでは、幽門輪後壁の早期胃癌0-IIaの他に、前庭部後壁に12mm大の早期胃癌0-IIcを認め、ESD目的に入院となった。ESDは蠕動と呼吸性変動のため内視鏡の操作性が悪く、また幽門輪後壁の病変は十二指腸球部内反転による内視鏡操作が必要であり3時間半と時間を要したが、2病変とも一括切除できた。しかし、内視鏡抜去時に切歯15cm食道右壁に8mm大の穿孔を認め、原因は不明だが術中に食道穿孔をきたしたと考えられた。軽度の皮下気腫と頸部痛を認めるのみで全身状態は落ち着いており、まずはクリップによる可及的な内視鏡的縫縮および絶飲食・抗菌薬による保存的加療とした。術翌日には38度の発熱とWBC20800/μl、CRP2.8mg/dlと炎症反応の上昇を認めたが、第2病日には解熱し症状は軽快傾向であった。CTや食道造影では縦隔膿瘍や造影剤の漏出を認めず、第15病日より食事を開始した。しかし、37度台の微熱、頸部痛、CRP9.6mg/dlと炎症の再燃を認め、微小穿孔の残存の可能性も否定できず、第20病日より再度絶飲食・抗菌薬による保存的加療とした。第28病日の食道造影では造影剤の漏出はなく、CTでは軽度の脂肪織濃度の上昇を認めるのみであった。EGDでは穿孔部は閉鎖しており治癒傾向であった。第33病日より流動食から食事再開、徐々に食上げし、第46病日退院となった。
 胃ESD中に食道穿孔をきたした報告は極めて少ない。高齢、ステロイド長期内服による食道粘膜の脆弱性、長時間にわたる十二指腸球部内反転による内視鏡操作などの影響の可能性が挙げられるが、はっきりとした原因は不明である。今回、早期胃癌ESD中に頚部食道穿孔をきたし保存的に治療し得た極めて稀な症例を経験したので、若干の考察を含めて報告する。
索引用語 食道穿孔, 胃ESD