セッション情報 一般演題

タイトル 34:

ミリプラチンのTACEからTAIへの切り替え後より著効が得られた肝細胞癌の一例

演者 竝川 昌司(桐生厚生総合病院 内科)
共同演者 新井 洋介(桐生厚生総合病院 内科), 飯塚 圭介(桐生厚生総合病院 内科), 古谷 健介(桐生厚生総合病院 内科), 山田 俊哉(桐生厚生総合病院 内科), 野中 真知(桐生厚生総合病院 内科), 飯田 智広(桐生厚生総合病院 内科), 柿崎 暁(群馬大学大学院医学系研究科 病態制御内科学), 佐藤 賢(群馬大学大学院医学系研究科 病態制御内科学), 丸田 栄(桐生厚生総合病院 内科), 山田 正信(群馬大学大学院医学系研究科 病態制御内科学)
抄録 【背景】肝細胞癌(HCC)治療の有効性に関して,日本肝癌研究会の追跡調査に基づく経カテーテル的肝動脈化学塞栓療法(TACE)と肝動注化学療法(TAI)の比較では,TACEが有意に高い生存率を示している.今回,ミリプラチンのTACEからTAIへの切り替え後より著効が得られたHCCの一例を経験したため報告する.
【症例】70歳代,男性.C型慢性肝炎にて近医通院中であった.2008年12月に施行したCTにて肝右葉に4.5cm大のHCCを認め,2009年1月に当院外科にて肝部分切除術を施行された.同年10月よりHCCの再発を繰り返しており,当科にてラジオ波焼灼術やエピルビシンによるTACE・TAIを施行した.しかしHCCが多発・増大傾向となり,2010年9月からはミリプラチンによるTACEを複数回行い,病勢コントロールを図った.同年12月に造影CTを施行した際,アナフィラキシーショックを生じ,以降は単純CT・MRIもしくは造影MRI(EOB)にて病勢評価を行った.その後もHCCの病勢は悪化し,2011年11月の血管造影検査の時点でT4N0M0となり,左右肝動脈よりミリプラチンのTAI(短時間注入法)を施行した.同治療前の腫瘍マーカーはAFP 41000ng/ml,PIVKAII 2454mAU/lと高値を示していたが,同年12月にはAFP 143ng/ml,PIVKAII 40未満mAU/lと著明に改善した.続く2012年1月,3月,5月にもミリプラチンのTAIを施行し,現在は腫瘍マーカーはいずれも正常,画像上も著効を維持している.
【考察】造影剤アレルギーがあり詳細な病勢評価はやや困難だが,ミリプラチンの使用法をTACEからTAIへ変更した後に,腫瘍マーカーの著明な低下が確認できた.我々の検索では,TACEからTAIに変更した際に抗癌剤も変更し,著効が得られた症例や,複数回のTAI後に治療効果を認めた症例の報告は散見するが,本例のような報告はみられなかった.
【結語】今回,ミリプラチンのTACEからTAIへの切り替え後より著効が得られたHCCの一例を経験した.同様の報告はみられず,稀な症例と考えられるため報告する.
索引用語 肝細胞癌, TAI