セッション情報 専修医セッション(卒後3-5年)

タイトル 15:

肝寄生虫症の1例

演者 明杖 直樹(船橋市立医療センター)
共同演者 水本 英明(船橋市立医療センター), 今関 洋(船橋市立医療センター), 高城 いぶき(船橋市立医療センター), 東郷 聖子(船橋市立医療センター), 関 厚佳(船橋市立医療センター), 小林 照宗(船橋市立医療センター), 安藤 健(船橋市立医療センター)
抄録 【はじめに】 肝寄生虫症は比較的まれな疾患であり診断に苦慮する症例も多い。今回は画像所見で肝細胞癌との鑑別が困難であった肝寄生虫症の1例を経験したので報告する。【症例】60歳男性。【現病歴】C型慢性肝炎のため外来通院中であった。定期検査の腹部超音波検査で肝に低エコー病変を指摘された。CT検査では単純で低吸収域、造影の動脈相で部分的な造影効果をみとめ、門脈相では一部低吸収であり、平衡相で再度淡く造影効果をみとめた。造影超音波検査ではvascular imagingで一部に軽度の造影効果をみとめたが、その後は病変の一部が低エコーを示した。MRI検査では、T1 in-phase、opposed-phaseでは淡い低信号域、T2強調像では高信号域となり、拡散強調画像では高信号域となった。EOBの動脈相では軽度の造影効果がみとめられ、肝細胞相では病変全体が低信号域となった。病状の経過と画像所見からは肝細胞癌の可能性を否定できず、本人と相談のうえ手術をおこなった。病理組織は幼虫移行症が原因と考えられる好酸球性肉芽腫という結果であった。手術後の血液検査では好酸球数は正常であったがIgEの著明な高値をみとめ、各種寄生虫に対する抗体検査ではブタ回虫がクラス2弱陽性であった。後に患者は牛の生レバーを食する習慣を有していたことが確認された。【考察】国内では地鶏や牛レバーの生食によるブタ回虫感染の成人症例が増加しているとされている。また、ヒト回虫とブタ回虫は形態的には鑑別不可能で、肉眼的にヒト回虫と同定されていた症例のうち一定の比率でブタ回虫症が生じていると考えられている。内臓幼虫移行症による肝病変は肝細胞癌と類似の画像を呈する場合があり、診断の際には注意が必要であると考える。
索引用語 肝寄生虫症, 肝細胞癌