セッション情報 研修医セッション(卒後2年迄)

タイトル 56:

肝静脈の段階的な血栓化により肝不全死したBudd-Chiari症候群の1例

演者 湯浅 絵理奈(国立病院機構 高崎総合医療センター 消化器病センター)
共同演者 長沼 篤(国立病院機構 高崎総合医療センター 消化器病センター), 星野 崇(国立病院機構 高崎総合医療センター 消化器病センター), 林 絵理(国立病院機構 高崎総合医療センター 消化器病センター), 小柏 剛(国立病院機構 高崎総合医療センター 消化器病センター), 上原 早苗(国立病院機構 高崎総合医療センター 消化器病センター), 宮前 直美(国立病院機構 高崎総合医療センター 消化器病センター), 工藤 智洋(国立病院機構 高崎総合医療センター 消化器病センター), 高木 均(国立病院機構 高崎総合医療センター 消化器病センター), 石原 弘(国立病院機構 高崎総合医療センター 消化器病センター), 小川 晃(国立病院機構 高崎総合医療センター 研究検査科), 壁谷 建志(公立藤岡総合病院附属外来センター 消化器内科)
抄録 【緒言】今回我々は、右中肝静脈の血栓化が先行し、その後左肝静脈の血栓化が生じて肝不全死に至ったBudd-Chiari症候群の1例を経験したので報告する。【症例】35歳、女性。主訴:発熱、嘔気、腹部膨満。既往歴:28歳時に堕胎後、右内頚静脈血栓症発症(ヘパリン治療後、1年半ワルファリン服用)、32歳時流産。現病歴:平成22年より非B非C型肝硬変にて近医へ通院中、平成23年8月CTにて、下大静脈(IVC)の閉塞と右中肝静脈の閉塞所見を認めていたが、診断に至らなかった。平成24年1月中旬より発熱、嘔気、腹部膨満が出現し、前医入院。CTではIVC及び右中肝静脈の狭小化と左肝静脈内に新鮮な血栓による閉塞所見を認め、肝左葉腫大を認めた。ここで初めてBudd-Chiari症候群と診断され、当科紹介入院となった。入院時身体所見:意識清明。腹部では心窩部に腫大した肝を3横指触知し腹水貯留を認めた。腹壁静脈怒張あり。四肢に浮腫著明。経過:入院時PT37%と凝固能低下あり、新鮮凍結血漿の輸血を施行。左肝静脈血栓の溶解による腹水、浮腫の改善を期待し、ダナパロイドナトリウム2500U/dayによる治療を開始。血栓症の素因検索ではカルジオリピン抗体IgGが陽性であり、抗リン脂質抗体症候群が疑われた。外科及び放射線科へ相談するも、外科治療及びIVR治療は困難と判断された。ダナパロイドナトリウムによる治療を1週間行うも左肝静脈血栓の改善は得られず、腹水は悪化した。徐々に肝性脳症、腹水、浮腫などの肝不全が進行したため、夫をドナーとする生体肝移植を検討していたが、2月下旬永眠された。剖検では右中肝静脈領域は肝硬変の所見であったが、左肝静脈領域はうっ血性に腫大しており、新鮮な肝静脈血栓症を認めた。【考察】本症例は杉浦分類II型(IVC完全閉塞例)に肝内静脈閉塞病変を合併した症例で、まず右中肝静脈閉塞が先行し、その後残されていた左肝静脈に血栓化が生じたことで急速に肝不全が進行したものと考えられた。本症例のように肝静脈の段階的な血栓化を剖検で確認できた報告はほとんどなく、示唆に富む貴重な症例と思われ今回報告する。 
索引用語 Budd-Chiari症候群, 肝静脈血栓