セッション情報 一般演題

タイトル 80:

ポリスチレンスルホン酸カルシウム(CPS)が関与したと考えられる急性出血性直腸潰瘍の2症例

演者 植木 紳夫(東京労災病院 消化器内科)
共同演者 西中川 秀太(東京労災病院 消化器内科), 團 宣博(東京労災病院 消化器内科), 朝井 靖二(東京労災病院 消化器内科), 山内 芳也(東京労災病院 消化器内科), 武田 悠希(東京労災病院 消化器内科), 大塚 隆文(東京労災病院 消化器内科), 和久井 紀貴(東京労災病院 消化器内科), 大場 信之(東京労災病院 消化器内科), 児島 辰也(東京労災病院 消化器内科)
抄録 症例1は80代女性。既往歴は逆流性食道炎、高血圧、高脂血症、心房細動、慢性腎不全、変形性膝関節症、便秘症、不眠症で内服加療されていた。現病歴は慢性腎不全急性増悪、うっ血性心不全で入院し、寝た切り状態であった。透析療法導入加療中の第16病日に鮮血便出現し出血性ショック状態となった。下部内視鏡検査で急性出血性直腸潰瘍(AHRU)と診断し内視鏡止血術を施行した。第21病日に再び出血認め内視鏡止血術を再施行した。再止血後に血便無く穿孔も認めなかったが、第25病日肺炎合併にてご永眠した。潰瘍部の病理組織検査結果で好塩基性多角形結晶物を認めた。症例2は70代男性。既往歴は胃癌術後、右大腿頸部骨折術後、不眠症、糖尿病性腎症で維持透析療法を週3回受けていた。現病歴は右人工股関節再置換術後第9病日に鮮血便出現し、出血性ショックを来たした。AHRUと診断し内視鏡的止血術施行したが、第15病日と第19病日に再出血し、内視鏡的止血術を繰り返した。その後は経過良好で第79病日退院となった。本症例でも病理組織検査で好塩基性多角形結晶物を指摘された。AHRUは基礎疾患を有する臥床患者に多く見られ、突然生じる無痛性直腸出血を契機に発症し、繰り返し出血する事が多いとされる。ADL低下に伴う直腸部の血流低下が一因と考えられ、止血後は頻回に体向変換を行うなどの対応も有用と考えられている。我々の経験した2症例ともADLが低下した状態であり、既報のAHRU発症経過と同様であった。一方で、両症例ともCPSを内服しており、潰瘍部から好塩基性多角形結晶が検出され、同薬剤に起因する直腸粘膜障害を合併したと考えられた。ポリスチレンスルホン酸型陽イオン交換樹脂剤は結腸粘膜障害が報告されており、CPSも重大な副作用として消化管穿孔などが指摘されている。AHRUは血圧動態が不安定となり腎不全患者に透析療法が施行困難な場合も有るため、CPSは高カリウム血症コントロールに有用だが、再出血予防の観点から内服中止が必要と考えられた。
索引用語 急性出血性直腸潰瘍, ポリスチレンスルホン酸カルシウム