セッション情報 研修医セッション(卒後2年迄)

タイトル 49:

関節炎発症から2年後に大腸炎が出現し,急激に劇症化・大腸穿孔に至った若年潰瘍性大腸炎の一例

演者 河野 邦幸(横浜市立大学附属 市民総合医療センター・炎症性腸疾患(IBD)センター)
共同演者 国崎 玲子(横浜市立大学附属 市民総合医療センター・炎症性腸疾患(IBD)センター), 山田 淳貴(横浜市立大学附属 市民総合医療センター・炎症性腸疾患(IBD)センター), 小笠原 康夫(横浜市立大学附属 市民総合医療センター・炎症性腸疾患(IBD)センター), 稲垣 尚子(横浜市立大学附属 市民総合医療センター・炎症性腸疾患(IBD)センター), 佐々木 智彦(横浜市立大学附属 市民総合医療センター・炎症性腸疾患(IBD)センター), 高 蓮浩(横浜市立大学附属 市民総合医療センター・炎症性腸疾患(IBD)センター), 木村 英明(横浜市立大学附属 市民総合医療センター・炎症性腸疾患(IBD)センター), 廣谷 あかね(横浜労災病院・消化器内科), 永瀬 肇(横浜労災病院・消化器内科), 前田 槇(横浜市立大学大学院医学研究科・消化器内科学)
抄録 【背景】 関節炎発症から2年後に軽微な大腸炎が出現し,その後4か月で急激に劇症化し大腸穿孔に至った,潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)の若年例を経験したので報告する.【症例】 18歳女性.2011年(15歳),全身の移動性の関節痛(肩,股,手,足,指)が出現し,膠原病科受診.リウマトイド因子49(IU/ml)と陽性,その他の自己抗体陰性,レントゲンで関節変形を認めず.関節リウマチ疑いとされ,NSAIDS頓服で経過観察されたが,その後も体動困難なほどの強い移動性関節痛を繰り返し認めていた.2013年6月,軽い下痢症状を認め大腸内視鏡検査を施行.深部結腸に多発する小黄色点を認めたが,腸炎症状は一過性で自然軽快.2013年8月,再度下痢が出現し内視鏡検査再検:直腸より全大腸に連続する発赤粗造顆粒状粘膜,生検病理組織で陰窩膿瘍を認め,UCと診断された.5-ASA製剤内服で下痢の改善を認めず,血便が出現.その後下痢,腹痛,血便が急増し,前医に緊急入院となった.絶食,ステロイド大量静注療法(prednisolone:PSL60mg(1mg/kg)/d)を開始するも改善なく,入院5日目に高度の腹痛が出現.PSL80mgに増量するも改善なく,加療目的で入院7日目に当院転院.ショックバイタル,腹膜刺激症状と,腹部レントゲンで腸管外遊離ガスを認め,穿孔性腹膜炎を疑い緊急開腹術を施行.全大腸は壊死に陥り,盲腸部に穿孔を認め,汎発性腹膜炎の所見であった.結腸亜全摘術,回腸人工肛門造設術,粘液瘻造設術,洗浄ドレナージ術を施行.術後一過性の腸閉塞を認めたが保存的に軽快し,術後32日目に軽快退院となった.【考察】 関節炎は,UC腸管外合併症として20-30%と高率に認められるが,多くはUCの発症初期に,腸炎の活動性と相関して出現する.本例は腸炎出現の2年前から多関節炎を認め,腸炎出現から4か月の短期間で劇症の壊死性腸炎と穿孔に至る,極めて稀な経過を辿った.文献的考察を加えて報告する.
索引用語 潰瘍性大腸炎, 関節炎