セッション情報 専修医セッション(卒後3-5年)

タイトル 26:

術前診断が困難であった,IgG4関連動脈周囲炎の1切除例

演者 富田 俊也(千葉徳洲会病院 内科)
共同演者 浅原 新吾(千葉徳洲会病院 内科), 松村 祐志(千葉徳洲会病院 内科), 高森 繁(千葉徳洲会病院 外科), 鶴田 好彦(千葉徳洲会病院 外科), 白部 多可史(千葉徳洲会病院 外科), 川上 英之(千葉徳洲会病院 外科), 宍倉 有里(千葉徳洲会病院 病理)
抄録 【症例】70歳,男性【主訴】下腹部痛【現病歴】2012年9月初旬,心窩部痛のため近医を受診.鎮痛剤を処方され経過観察されていたが,9月中旬に下腹部痛がみられるようになったため,再診し,当院を紹介受診.【既往歴】15歳,虫垂炎【現症】血圧131/84mmHg,脈拍70,整.体温35.8度.右下腹部に腫瘤触知.【経過】血液検査ではWBC正常値,CRP4.23mg/dlと軽度上昇.肝,胆道系酵素,アミラーゼ,LDH,CEA,CA19-9は正常,sIL-2R639U/mlと軽度上昇.造影CTで十二指腸水平脚と回腸末端の腸間膜に不整形の軟部構造を認め,腫瘤の中心に動脈の走行がみられた.周囲脂肪組織の濃度上昇を伴っており,腸間膜脂肪織炎や十二指腸または回腸の炎症の波及,悪性リンパ腫などが疑われた.なお上部,下部消化管内視鏡では明らかな原因は不明であった.アセトアミノフェンで症状は軽減したため経過観察としたが,1ヶ月後の血液検査ではWBCは正常値だが,CRPは4.58mg/dlと改善がみられず,CTでは炎症範囲の拡大,右水腎症の出現がみられた.手術直前のIgG4は32mg/dl,抗核抗体,抗DNA抗体,抗SS-A,SS-B抗体はすべて陰性であり,悪性腫瘍の否定もできず,11月に右半結腸切除+小腸切除+十二指腸部分切除を施行した.病理組織では,腫瘤は5x4x2.5cmで,割面は白色調で境界不明瞭.腸間膜や漿膜下の脂肪織に,濾胞形成を呈するリンパ球及びIgG4陽性形質細胞の浸潤と線維性結合織の増生があり,慢性炎症細胞浸潤は,大小の動静脈や神経周囲に目立っていた.以上から,IgG4関連動脈周囲炎と診断した.術後よりプレドニン40mgの投与を開始し,半年間で漸減して中止したが,現在まで再発はみられていない.【結語】血清IgG4正常,自己抗体陰性であり,炎症性腹部大動脈瘤もみられず,術前診断が困難であったIgG4関連動脈周囲炎の1切除例を経験した.
索引用語 IgG4関連動脈周囲炎, IgG4関連疾患