セッション情報 研修医セッション(卒後2年迄)

タイトル 67:

後腹膜線維症と鑑別を要した膵鉤部癌後腹膜浸潤の1例

演者 工藤 千佳(国立病院機構 高崎総合医療センター 消化器病センター内科)
共同演者 宮前 直美(国立病院機構 高崎総合医療センター 消化器病センター内科), 小板橋 絵理(国立病院機構 高崎総合医療センター 消化器病センター内科), 上原 早苗(国立病院機構 高崎総合医療センター 消化器病センター内科), 小柏 剛(国立病院機構 高崎総合医療センター 消化器病センター内科), 星野 崇(国立病院機構 高崎総合医療センター 消化器病センター内科), 長沼 篤(国立病院機構 高崎総合医療センター 消化器病センター内科), 工藤 智洋(国立病院機構 高崎総合医療センター 消化器病センター内科), 高木 均(国立病院機構 高崎総合医療センター 消化器病センター内科), 石原 弘(国立病院機構 高崎総合医療センター 消化器病センター内科)
抄録 症例は69歳男性。臍周囲の腹痛を自覚し数週間持続するため近医を受診。上部消化管内視鏡検査および腹部エコー検査を受けるも明らかな異常を認めなかった。血液検査では炎症反応や肝胆道系酵素、膵酵素の上昇がないものの、CA19-9が380 U/mlと上昇していたため精査加療目的に当院紹介となった。腹部造影CT検査にて、腹部大動脈から上腸間膜動脈周囲にかけて、わずかに造影効果のある境界不明瞭な軟部陰影が広がり、膵鉤部と連続していた。軟部陰影は血管を取り囲むように存在していたが、血管壁への明らかな浸潤を認めなかった。膵鉤部ではCT値が上昇し、わずかに造影効果を認めたが、明らかな腫瘤形成を認めなかった。また左副腎に27ミリ大の腫瘤を認めた。MRI検査では軟部陰影はT1強調画像で低信号、拡散強調像で高信号であった。PET検査では軟部陰影および左副腎にSUV2.5前後の淡い集積を認めたが、他部位には有意な集積は認めなかった。血液検査では、CEA 6.7ng/ml、CA19-9 423.7 U/mlと腫瘍マーカーの上昇を認めたが、IgG4は5 mg/dl(4-108)と低値だった。副腎皮質・髄質ホルモンは正常範囲内であった。画像および血液検査からは膵鉤部癌の後腹膜浸潤が疑われたが、後腹膜線維症なども鑑別を要し、確定診断に至らなかった。そこで軟部陰影に対して開腹生検を施行したところ、脂肪組織内に異形腺管が幼弱な線維化を伴って浸潤しており、高分化膵癌の後腹膜浸潤と診断した。左副腎腫瘤に関しては膵癌の副腎転移の可能性も否定できず、また軟部陰影は境界不明瞭で、近傍に腸管も存在することから放射線性腸炎の発症が懸念されたため、放射線化学療法を行わず、ゲムシタビン単剤による化学療法を選択した。今回、腫瘤形成を伴わない膵鉤部癌の後腹膜浸潤症例を経験した。膵癌と後腹膜線維症の鑑別を要する症例は少数報告されているが、今回開腹生検が診断に有用であり、若干の文献的考察を加え報告する。
索引用語 膵癌, 後腹膜線維症