セッション情報 専修医セッション(卒後3-5年)

タイトル 10:

日本住血吸虫症に合併した同時多発性大腸腺腫症の一例

演者 河合 恵美(横浜船員保険病院)
共同演者 天野 仁至(横浜船員保険病院), 石井 泰明(横浜船員保険病院), 井出野 奈緒美(横浜船員保険病院), 塩沢 牧子(横浜船員保険病院), 内藤 実(横浜船員保険病院)
抄録 症例は74歳男性。平成25年3月四肢の疼痛、掻痒、表皮剥離が出現し近医を受診した。6月症状が継続するため当院皮膚科を紹介受診され掌蹠角化症と診断された。その後、SCC軽度高値 (2.9 ng/ml)、便潜血陽性であり当科に紹介受診となった。精査の結果、下部消化管内視鏡検査で横行結腸にIs型ポリープがあり、S状結腸に5-20mm大のLST様な大腸ポリープを多数認めた。S状結腸のポリープは粘膜が浮腫状で不整形、黄色調であった。これらの大腸ポリープに対して内視鏡的粘膜切除術を施行した。病理診断でTubular adenomaであり、S状結腸のポリープのみ間質内に多数の住血吸虫卵を認めた。14歳時に山梨県甲府市に在住していたことがあり、また日本住血吸虫症の治療歴があるため日本住血吸虫卵と考えられた。便虫卵検査で虫卵を認めず、採血や腹部超音波検査でも明らかな住血吸虫症を示唆する所見を認めなかったため日本住血吸虫症に対する治療は行わなかった。日本住血吸虫症に合併した大腸ポリープでは粘膜の浮腫や萎縮、血管透見像の異常、血管拡張性赤色斑、不整形黄色斑などの肉眼的特徴がある。中でも不整形の黄色斑は他の所見よりも住血吸虫卵が多いと報告されている。また、S状結腸や直腸のような下部大腸の粘膜下層に虫卵が多く存在することも特徴であり、本症例と一致した所見である。日本住血吸虫症と大腸癌の関連を示唆する報告はあるが、日本住血吸虫症に合併した大腸腺腫症の症例報告はまれである。本邦では中間宿主であるミヤイリガイが駆除されたことにより1977年に山梨県で虫卵排泄者が見られたのを最後に新規の日本住血吸虫症の発症はないが、高齢者の中には既往のある患者がいるため、本症例のような不整形で扁平な黄色調のポリープを認めた場合は日本住血吸虫症を考慮する必要があると考えられた。
索引用語 日本住血吸虫症, 大腸腺腫