セッション情報 研修医セッション(卒後2年迄)

タイトル 62:

ADPKDに伴う肝動脈瘤破裂による胆道出血に対して動脈塞栓術が奏功した1例

演者 中野 秀比古(湘南鎌倉総合病院 消化器病センター)
共同演者 魚嶋  晴貴(湘南鎌倉総合病院 消化器病センター), 市田 親正(湘南鎌倉総合病院 消化器病センター), 所 晋之助(湘南鎌倉総合病院 消化器病センター), 増田 作栄(湘南鎌倉総合病院 消化器病センター), 佐々木 亜希子(湘南鎌倉総合病院 消化器病センター), 小泉 一也(湘南鎌倉総合病院 消化器病センター), 金原 猛(湘南鎌倉総合病院 消化器病センター), 江頭 秀人(湘南鎌倉総合病院 消化器病センター), 賀古 眞(湘南鎌倉総合病院 消化器病センター)
抄録 【緒言】肝動脈瘤破裂に伴う胆道出血は比較的まれな疾患である.今回われわれは常染色体優性多発嚢胞腎(以下ADPKD)が発症に関与したと考えられる肝動脈瘤が破裂し,胆道出血をきたした一例を経験したので報告する.【症例】70歳 男性.2005年ADPKDに伴う腎機能障害で血液維持透析導入となった.2013年7月心窩部痛を伴う血便が出現したため,近医より紹介受診された.来院時腹部造影CT検査は拡張した総胆管と胆管内に血腫が認められ,肝左葉に動脈瘤が認められた.上部内視鏡検査では乳頭部より活動性出血は認められなかったが,ERCPによる胆管内造影では,総胆管内に透亮像と凝血塊が認められ,肝動脈瘤破裂による胆道出血と診断した.血管造影検査ではS4領域に動脈瘤への供血路を確認し,同血管にたいして塞栓術施行した.術後合併症なく経過し,第14病日退院となった.第90病日CT検査では,肝動脈瘤の消失を確認し,その後も再出血を認めず経過している.【考察】胆道出血はSandblomが1948年に外傷性の症例を最初に報告し,比較的まれな疾患である.キーワードを「肝動脈瘤破裂 胆道出血」として1972年~2012年まで医中誌で検索すると,本邦における報告は自験例を含め32例で(会議録を除く),平均年齢62.1歳, 男性22例,女性10例だった.肝動脈瘤の原因は医原性を含めた外傷性と急性膵炎や感染症に伴う炎症により起因した動脈瘤が26例(81.2%)だった.動脈硬化に伴う肝動脈瘤も少数例報告されているが,本症例は既往のADPKDとの関与が疑われた.ADPKDは脳動脈瘤や胸部大動脈瘤を合併することが知られており,動脈壁構成に関与するPKD1やPKD2変異との関連も報告されている.本症例におけるADPKDに伴う肝動脈瘤について,背景因子であるPKD変異の検討もふまえて報告する.
索引用語 ADPKD, 胆道出血