共同演者 |
大山 達也(済生会前橋病院 消化器内科), 加藤 恵理子(済生会前橋病院 消化器内科), 椎名 啓介(済生会前橋病院 消化器内科), 平野 裕子(済生会前橋病院 消化器内科), 田中 良樹(済生会前橋病院 消化器内科), 蜂巣 陽子(済生会前橋病院 消化器内科), 矢田 豊(済生会前橋病院 消化器内科), 吉永 輝夫(済生会前橋病院 消化器内科), 山田 正信(群馬大学医学部付属病院 病態制御内科学), 藍原 龍介(済生会前橋病院 外科・腹腔鏡外科センター), 細内 康男(済生会前橋病院 外科・腹腔鏡外科センター) |
抄録 |
【はじめに】今回, 我々は特異な形態変化を認めた炎症性偽腫瘍の一例を経験したので, 報告する.【症例】65歳男性. 2013年7月下旬より右背部の疼痛を自覚していた. 自己判断で湿布塗布にて経過をみていたが改善せず, 同部位の腫瘤に気づいたため, 10月に当院整形外科を受診した. 初診時, 右腰背部に圧痛を伴う径4cm大の腫瘤を認めた. 腹部造影CTでは, 肝後区域~後腹膜に不整形の6×4cm大の腫瘤性病変を認め, 一部は肝実質への浸潤が疑われた. 血液検査では炎症反応の軽度上昇を認めるものの, 肝胆道系酵素は基準値内であり, 肝炎ウイルスマーカーや腫瘍マーカーは陰性であった. 経皮経肝針生検を試みるも診断確定には至らなかった. その後も腫瘤は増大傾向を認め, 熱感や疼痛も出現したため, 再度腹部造影CTを撮影したところ, 病変の主座は腹壁へ移動し, 一部膿瘍を形成していることから, 腫瘍よりも慢性炎症性変化が疑われた. さらなる精査目的に小切開下に外科的組織生検を行った. 病理検査では明らかな腫瘍細胞は認めず, 組織球や好中球の浸潤が主体であることから, 後腹膜の炎症性偽腫瘍と診断した. 細菌感染の可能性を考慮し, 抗生剤内服を開始し, 現在も経過観察中である. 【考察】特異な形態変化を認めた炎症性偽腫瘍の一例を経験した. 周囲に浸潤増殖する病変であることから悪性腫瘍との鑑別が必要だったが, 複数回の生検と継時的変化を追うことで診断を得ることができた. 炎症性偽腫瘍の確定診断はしばしば困難であり, 後腹膜腫瘤の鑑別診断としても重要である. 本症例のその後の経過, および文献的考察を加えて報告する. |