セッション情報 一般演題

タイトル 04:

経動脈的血栓溶解療法を用い保存的に軽快した上腸間膜動脈塞栓症の一例

演者 志村 和政(社会保険山梨病院 消化器内科)
共同演者 曽田 均(社会保険山梨病院 外科), 安村 友敬(社会保険山梨病院 外科), 矢川 彰治(社会保険山梨病院 外科), 小沢  俊総(社会保険山梨病院 外科), 松本  敬子(社会保険山梨病院 放射線科)
抄録 上腸間膜動脈塞栓症は急性腹症の鑑別すべき疾患のひとつで、早期に適切な治療が行われなければ腸管壊死を来し、予後不良となる疾患の一つである。治療は壊死腸管の切除か腸管壊死がなければ血行再開通術となるが、発症直後は特徴的な所見に乏しく、早期診断は実際には困難なことが多い。そのため、結果的に広範な腸切除が行われることが多い。今回われわれは、経動脈的血栓溶解療法を用い保存的に治癒した上腸間膜動脈塞栓症の一例を経験したので報告する。症例は71歳、女性。主訴は下痢、吐気。現病歴は2012年8月11日、夕方から水様性下痢、吐気が出現し夜間救急外来を受診。採血、レントゲン上は明らかな異常所見は認めず、腹部所見も軟で圧痛などは認めなかった。食欲不振もあり、補液、経過観察目的に同日入院となった。翌日深夜、血便が出現。腹部症状の増悪は認めなかった。同日8時に造影CTを施行したところ、上腸間膜動脈根部より約3cm末梢部に造影欠損域を約8cmに渡って認めた。しかし、血管内部に造影効果を認める部分もあり、不完全閉塞と考えられた。回腸から、上行結腸、横行結腸にかけての軽度の壁肥厚と、造影効果の低下を認めたが、腹水は認めなかった。以上の所見より、上腸間膜動脈塞栓症の診断となったが、患者の自覚症状、他覚症状が軽度であること、CT所見より塞栓症の発症直後で不完全閉塞であり、腸管壊死にまでは至っていないと考え経動脈的血栓溶解術を施行した。造影では、上腸間膜動脈造影に血栓を認め、同部からウロキナーゼ30万Uを注入したところ、血栓は縮小し、血流の再開通を認めた。同日よりウロキナーゼの持続注入を行い、翌日の血管造影では腸管への血流はさらに改善していた。血栓溶解療法後も、腹部症状の増悪は認めず、保存的に改善した。経口摂取開始後、内服による抗血栓療法を行い第26病日に治癒退院となった。今回われわれは血栓溶解療法で非手術治療に治癒しえた上腸間膜動脈塞栓症の一例を経験したので報告する。
索引用語 上腸間膜動脈血栓症, 血栓溶解療法