セッション情報 一般演題(研修医(卒後2年迄))

タイトル 07:

小腸に多発が認められた異所性膵の一例

演者 芦原 典宏(諏訪赤十字病院 消化器科)
共同演者 進士 明宏(諏訪赤十字病院 消化器科), 池田 義明(諏訪赤十字病院 外科), 溜田 茂仁(諏訪赤十字病院 消化器科), 上條 敦(諏訪赤十字病院 消化器科), 太田 裕志(諏訪赤十字病院 消化器科), 武川 建二(諏訪赤十字病院 消化器科), 山村 伸吉(諏訪赤十字病院 消化器科), 中村 智次(諏訪赤十字病院 病理部)
抄録 症例は73歳女性。逆流性食道炎で近医通院中に受けた定期上部消化管内視鏡検査で胃体下部前壁に褐色域を伴った多結節病変を指摘され当院紹介となった。同部生検でMALTリンパ腫と診断された。Gaシンチでは胃限局の集積のみ,胸腹部CT検査では他臓器への浸潤認めずStage1,尿素呼気試験でピロリ菌陽性であることから除菌療法を施行した。除菌後同CT検査でみられた左内腸骨動脈瘤に対し瘤切除術を施行された。術後1週間のCT検査で空腸に11mm大の濃染結節が認められ,retrospectiveにみても術前のCTでは指摘できず,短期間で発育したhigh grade componentの可能性も考え経口小腸ダブルバルーン内視鏡検査を施行,空腸に2か所のびらんを伴わない粘膜下腫瘍を認めた。診断目的で2病変(以後A,B)とも腹腔鏡下小腸部分切除術を施行した。切除組織像はAが1.5×1.0cm大で筋層内を中心に粘膜下にかけて膵管,腺房やランゲルハンス島が小集簇巣を形成し一部で膵管拡張を伴う粘液産生も認められHeinrich1型,Bは直径5mmで筋層内に少数の膵管を認めるのみの同3型の異所性膵だった。なお除菌は成功し胃病変は内視鏡,病理所見ともにCRと判定し経過観察中である。異所性膵は解剖学的にも支配血管からも正常膵と連続性を欠き,異所性に存在する膵組織を称する。医学中央雑誌で1992年から2012年,『異所性膵』をキーワードに検索したところ464例が報告されていた。男女比は1.4:1.0,平均年齢は45.6歳。部位として小腸が195例と最多,胃147例,胆嚢15例,肝内13例と続いた。84例に腺癌を合併,68例で腸重積を認めた。組織学的にはHeinrich1型が33例,2型が21例,3型が17例確認された。多発例は464例中4例(0.86%)のみだった。多発症例の異所性膵の部位は小腸で3型と2型で2か所が1例,胃と十二指腸でともに2型が1例,胆嚢と十二指腸1か所ずつが1例,肝内多発が1例見られた。術前診断されたのは全体の3.5%だった。異所性膵の術前診断は困難であり,画像所見・内視鏡などで異常が指摘されても確定診断に至ることは稀である。しかし全体の18.1%の症例では癌化が見られることから異所性膵を疑う病変が見られる症例は切除が必要と考える。
索引用語 異所性膵, 小腸