セッション情報 一般演題(専修医(卒後3-5年))

タイトル 03:

抗凝固薬内服中に発症した小腸壁内血腫の2例

演者 中嶌 雄高(新潟県立十日町病院外科)
共同演者 福成 博幸(新潟県立十日町病院外科), 吉野 潤(新潟県立十日町病院外科), 岡島 千怜(新潟県立十日町病院外科), 設楽 兼司(新潟県立十日町病院外科), 林 哲二(新潟県立十日町病院外科), 染野 泰典(東京医科歯科大学 腫瘍外科)
抄録 ワーファリン内服中に小腸壁内血腫を発症した2例を経験した。症例1:87歳男性。左下腹部痛と嘔吐にて救急搬送された。前医で下肢静脈血栓症に対してワーファリン3.75mg内服中であり、来院時PT時間:163.9秒(11.0-14.0)、PT-INR:11.46であった。腹部CTでは下腹部小腸の浮腫性壁肥厚と内腔の狭小化を認め、小腸壁内血腫と診断し、ビタミンK製剤による拮抗を行った。翌日にイレウスを発症したためイレウス管を挿入したが、保存的加療にて軽快し退院となった。症例2:84歳女性。イレウス精査加療目的に紹介入院、心原性脳梗塞に対してワーファリン2mg内服中であり、来院時PT時間:52.9秒(11.0-14.0)、PT-INR:17.2であった。左上腹部に圧痛を認め、腹部CTでは同部位に一致して腸管壁の肥厚とtarget signを認め、粘膜下出血と腸重積症が考えられた。イレウス管挿入後緊急開腹手術施行、術中所見ではTreitz靱帯より40cm肛門側の空腸に壁内血腫部を先進部とした腸重積を認め、同部位を切除した。また重積部以外の小腸にも多発する壁内血腫を認めた。病理所見では粘膜は壊死しており、血腫は粘膜下層主体で、粘膜下層~漿膜下層に出血・うっ血・浮腫を認めた。また重積した血腫部より肛門側の腸間膜対側にUL I~IIの縦走潰瘍と、口側に卵円形のびらんおよび二次性の急性炎症を認め、重積による虚血性変化と考えられた。 腸管壁内血腫は比較的稀な疾患であり、その発生部位は十二指腸がほとんどである。また発生原因としては、外傷によるものが大半であると報告されているが、今回われわれは抗凝固療法にともなう小腸の壁内血腫を経験したので文献的考察を加え報告する。
索引用語 血腫, 抗凝固療法