セッション情報 一般演題

タイトル 48:

IgG4関連疾患と考えられた腸間膜脂肪織炎の一例

演者 野澤 優次郎(新潟県立吉田病院 消化器内科)
共同演者 坂 暁子(新潟県立吉田病院 消化器内科), 中村 厚夫(新潟県立吉田病院 消化器内科), 八木 一芳(新潟県立吉田病院 消化器内科), 岡本 春彦(新潟県立吉田病院 外科), 小野 一之(新潟県立吉田病院 外科), 田宮 洋一(新潟県立吉田病院 外科)
抄録  症例は80歳代、男性。2012年12月黒色便、左下腹部痛を主訴に近医を受診した。上部消化管内視鏡検査で異常を認めず、腹部エコーで左下腹部に高エコーの腫瘤性病変を指摘された。精査加療目的に当院を紹介受診した。血液検査ではCRPの上昇、アルブミン・グロブリン比の低下を認めた。CTでS状結腸間膜脂肪織の濃度上昇とS状結腸の全周性壁肥厚を認めたが、大腸内視鏡検査では浮腫状の狭窄を認めるのみで、粘膜面に異常所見は認められなかった。以上から腸間膜脂肪織炎を最も疑い、腸管安静、抗生剤の投与を開始した。しかし、炎症所見の改善が乏しく、狭窄症状が出現したために手術の方針となった。開腹すると、S状結腸間膜は著しく肥厚し、下行結腸、S状結腸と一塊となり、後腹膜と強固な癒着を認めた。また、小腸間膜に2 cm大の硬結を認めた。S状結腸および虫垂切除術が施行された。病理では漿膜下に炎症細胞浸潤と線維化を認めた。炎症細胞はリンパ球、形質細胞からなり、IgG4陽性形質細胞を多数認めた。術後の血中IgG4は101 mg/dlであった。嘔吐が続くため、術後17日にCTを施行施行すると小腸狭窄と左尿管の限局性壁肥厚と狭窄、それに伴う左水腎症を認めた。術後18日からステロイドの投与(125 mg/日を3日間静注した後、20 mg/日の内服)を開始すると、嘔吐および左水腎症は速やかに改善した。術後31日に退院し、現在ステロイド 20 mg/日の内服を継続している。 原因不明の腸間膜脂肪組織の慢性非特異的炎症である腸間膜脂肪織炎は、画像所見のみでは確定診断できず、手術が施行される例も少なくない。ステロイドの使用で改善する例も報告されているが、有効な治療法は確立されていない。本例のようにIgG4関連疾患と考えられた腸間膜脂肪織炎の症例報告は少なく、貴重な症例と考えられたため報告する。
索引用語 腸間膜脂肪織炎, IgG4関連疾患