セッション情報 一般演題(専修医(卒後3-5年))

タイトル 38:

肝原発扁平上皮癌破裂の一例

演者 五十嵐 俊三(新潟市民病院 消化器内科)
共同演者 和栗 暢生(新潟市民病院 消化器内科), 佐藤 理映(新潟市民病院 消化器内科), 荒生 祥尚(新潟市民病院 消化器内科), 佐藤 宗広(新潟市民病院 消化器内科), 五十嵐 健太郎(新潟市民病院 消化器内科), 眞鍋 祥一(新潟市民病院 消化器外科), 横山 直行(新潟市民病院 消化器外科), 大谷 哲也(新潟市民病院 消化器外科), 三間 紘子(新潟市民病院 病理科), 橋立 英樹(新潟市民病院 消化器外科), 渋谷 宏行(新潟市民病院 病理科)
抄録 肝原発扁平上皮癌破裂の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.症例は83歳,女性.高血圧症,胃潰瘍,骨粗鬆症の診断で外来加療中であった.持続する上腹部痛の増強を主訴に当院救急外来を受診し,CTにて肝左葉外側区域に巨大腫瘍,腹腔内出血所見を認めた.暫定的に肝細胞癌破裂の診断で緊急肝動脈塞栓術を施行した.腫瘍背景としてウイルス感染,肝機能低下は指摘できず,また腫瘍マーカー(AFP,PIVKAII,CEA,CA19-9)の上昇も認めなかった.画像的には嚢胞様部分が多く,肝細胞癌としては非典型的であった.高齢ではあったが単発腫瘍で肝予備能も保たれていることから,再破裂予防,診断確定のために肝外側区域切除術を施行した.病変は85×95×120mm大の嚢胞性肝腫瘍であり,組織学的には明瞭な角化を呈する扁平上皮癌の像であった.転移性肝癌を考慮し全身検索を行ったが原発巣を指摘できず,肝原発扁平上皮癌と診断した.術後は当院消化器外科で経過観察したが,術後6か月で再発所見(腹膜種播、肺・肝・リンパ節転移)を認めた.S-1による加療を開始したがPDの評価である.肝原発扁平上皮癌は非常に稀な疾患である.発生機序には諸説あるが現在明らかにされていない.本症例は全割標本でも大部分は扁平上皮癌の診断で矛盾はなかったが,粘液形成所見を認め,さらに免疫染色でCA19-9,MUC2,MUC5ACが一部で陽性であり腺癌成分を一部有していると考えた.扁平上皮癌と比し腺扁平上皮癌の報告症例が多いこと,多くの腺扁平上皮癌症例では腺癌と扁平上皮癌との移行像を認めるといった報告から胆管上皮での腺癌発生後に扁平上皮化生が起こり,transformationにより発生したとする説を有力と考えている.しかし,嚢胞を裏打ちする癌部の一部で非腫瘍性扁平上皮の可能性がある部分があり,胆管上皮あるいは嚢胞壁で扁平上皮化生が惹起され,その後癌化したとする説の可能性も考えられる.本疾患は発見時にはすでに進行していることが多く予後不良とされるが,確固たる診断法,治療方針がなく今後も症例の蓄積,検討が望まれる.
索引用語 肝原発癌, 扁平上皮癌