セッション情報 一般演題(専修医(卒後3-5年))

タイトル 31:

根尖性歯周炎が原因と考えられたFusobacteriaによる肝膿瘍の一例

演者 藤田 識志(国立病院機構信州上田医療センター 消化器内科)
共同演者 吉澤 要(国立病院機構信州上田医療センター 消化器内科), 丸山 康弘(国立病院機構信州上田医療センター 消化器内科), 丸山 雅史(国立病院機構信州上田医療センター 消化器内科), 藤森 一也(国立病院機構信州上田医療センター 消化器内科), 滋野 俊(国立病院機構信州上田医療センター 消化器内科), 田中 宏和(国立病院機構信州上田医療センター 歯科口腔外科), 宮澤 英樹(国立病院機構信州上田医療センター 歯科口腔外科)
抄録 基礎疾患のない若年男性に発症した化膿性肝膿瘍の一例を経験した。症例は42歳、男性。発熱、全身倦怠感で発症、近医を受診し、肝機能障害を指摘され当院紹介となった。38℃台の発熱、肝胆道系酵素の上昇を認め、白血球増多、好中球左方移動、 CRP 19.1 mg/dlと炎症反応は高値であった。腹部超音波および造影CTにて肝後区域に6cm大の単発性膿瘍を認めた。経皮経肝膿瘍ドレナージにて腐敗臭のある膿性排液を認め、SBT/CPZ投与を開始した。培養結果からFusobacterium speciesによる肝膿瘍と判明し、薬剤感受性も良好であることを確認した。自覚症状、炎症反応、肝機能ともに改善し、腹部超音波画像上も膿瘍の縮小を認め、入院第17病日に退院した。その後AMPCを8週間にわたり内服し、腹部造影CTにて膿瘍の消失が確認された。化膿性肝膿瘍の起因菌としては、Klebsiella pneumoniaeEscherichia coliが多いとされているが、嫌気性菌培養技術の向上に伴い、近年ではFusobacteriaによるとされる症例も報告されている。Fusobacteriaは偏性嫌気性の無芽胞グラム陰性桿菌で、人の口腔・咽頭・腸管に常在しているとされ、Lemierre syndromeの起因菌として知られている。歯科・口腔領域の膿瘍形成に関わるとともに、全身諸臓器の膿瘍形成に関与している。感染巣の検索として、口腔内、下部消化管の検査を行った結果、根尖性歯周炎を認め、抜歯を行った。同部位からは抗生剤開始後であったためか菌は検出されなかったが、肝膿瘍の原因と考えられた。本症例では歯痛、咬合時の違和感など歯周病を疑わせる症状は全くなく、口臭やう歯などの明らかな所見は認められなかった。化膿性肝膿瘍の診療では、自覚症状の有無に限らず、口腔領域を含めた全身検索が必要であるとともに、Fusobacterium speciesのような常在菌も起因菌となりうることを念頭に置くことが重要であると考えられた。
索引用語 肝膿瘍, Fusobacterium