セッション情報 一般演題

タイトル 36:

繰り返す胆道出血をきたしたHCCの1例

演者 清水 雄大(佐久総合病院 内科)
共同演者 古武 昌幸(佐久総合病院 内科), 高松 正人(佐久総合病院 内科), 桃井 環(佐久総合病院 内科), 比佐 岳史(佐久総合病院 内科)
抄録 【症例】80歳男性。
【既往歴】十二指腸潰瘍術後(幽門側胃切除、Billroth-I 再建)。虫垂炎術後。糖尿病。慢性心房細動(ワルファリン内服中)。不安定狭心症。非B非C型肝硬変。76歳時、多発HCCに対しTACEおよびRFAを施行した。
【経過】心窩部不快感を主訴に受診し、血液検査上、肝胆道系酵素の上昇を認めたため、当科入院となった。CTにて、肝S7の多血性HCCから連続する胆道内に高濃度を認めたため、HCCによる胆道出血およびそれによる閉塞性黄疸と診断した。入院2日目、ERCP施行し、バルンカテーテルにて血腫除去し、ERBD留置を行った。入院8日目、ERBD抜去目的に内視鏡検査を行うと、ERBDから出血をきたしており、抜去は中止した。入院9日目、TACEを施行した。その後、貧血の進行なく、入院14日目、内視鏡検査で出血を認めなかったため、ERBDを抜去した。その後は出血の再発を疑う所見なく経過していた。
 約1年半後、腹痛と発熱を主訴に受診した。CTで肝膿瘍が見られ、入院とした。肝S7のHCCによる胆管閉塞が原因と判断した。抗生剤により加療した。腹痛、発熱は改善したが、入院8日目、突然心窩部不快感および黒色便を訴えた。血液検査で貧血と胆道酵素上昇がみられた。CTにて、肝S7のHCCから連続する胆道内に高濃度を認め、胆道出血と診断した。感染合併のために保存的加療を試みたが貧血がさらに進行したため、入院12日目、TACEを施行した。その後は貧血の進行なく、胆道酵素上昇や感染徴候も改善した。
 さらに約半年後、再び同様の症状を訴え、受診した。CTから、胆道出血と診断し、入院とし、TACEを施行した。その後は貧血の進行なく経過した。胆道出血初発から約2年経過した現在でも生存中である。
【考察】HCCの胆道出血は比較的稀な病態であるが、HCCの患者に急な心窩部痛や貧血の進行を認めた場合は鑑別に加えるべきである。胆道出血を発症したHCCでは、本邦報告例の検討において約60%で発症後6か月以内に死亡しており、予後不良である。本例は胆道出血を3回反復し、その都度TACEが奏功し、初回出血から約2年の生存が得られており貴重な症例と考える。
索引用語 胆道出血, 肝細胞癌