セッション情報 一般演題(研修医(卒後2年迄))

タイトル 21:

膵十二指腸動脈瘤破裂の1例

演者 小宮山 泰之(山梨大学 医学部 第一内科)
共同演者 高橋 英(山梨大学 医学部 第一内科), 加藤 亮(山梨大学 医学部 第一内科), 横田 雄大(山梨大学 医学部 第一内科), 進藤 浩子(山梨大学 医学部 第一内科), 高野 伸一(山梨大学 医学部 第一内科), 深澤 光晴(山梨大学 医学部 第一内科), 佐藤 公(山梨大学 医学部 第一内科), 榎本 信幸(山梨大学 医学部 第一内科)
抄録 腹部内臓動脈瘤は全動脈瘤で占める割合が0.1~0.2%と稀な病態であり、その中でも膵十二指腸動脈に発生するものは約2%といわれている。今回われわれは臨床症状、画像所見から急性膵炎と診断されていた膵十二指腸動脈瘤破裂の1例を経験したので報告する。症例は55歳、男性。突然の腹痛、背部痛、意識消失にて前医救急搬送された。単純CTで膵頭部周囲から右腎下極以遠に及ぶ液体貯留、脂肪織濃度上昇所見を認め、重症急性膵炎(CTgrade3)として保存的加療の方針となった。採血ではAMY上昇は認めなかった。入院中に再度腹痛、背部痛あり、並行して貧血進行を認めた。その後血液検査でHb 5.0g/dLと急激に低下、CT画像上も膵仮性動脈瘤破裂が疑われたため当院に緊急入院となった。転院後緊急血管造影検査を施行。上腸間膜動脈造影にて前上膵十二指腸動脈と後上膵十二指腸動脈のアーケードに径30mm 大の動脈瘤を認めた。腹腔動脈造影では狭窄している腹腔動脈起始部を認め、CT画像では腹腔動脈起始部は正中弓状靭帯によって圧迫され狭窄していた。以上より正中弓状靱帯圧迫症候群を原因とする腹腔動脈起始部狭窄により形成された膵十二指腸動脈瘤破裂と診断した。治療としては動脈瘤を中心とした後上膵十二指腸動脈、前上膵十二指腸動脈の中枢・末梢両側塞栓を試みた。前上膵十二指腸動脈に関しては動脈瘤からの流出路の塞栓は行えたものの、流入路を同定することが困難であっため動脈瘤内にもコイリングを行った。術後経過は良好であり、治療後評価のため塞栓術後17日で血管造影を施行し動脈瘤への血流や流入血管がないことを確認。その後再出血なく退院となり、現在外来フォロー中である。膵十二指腸動脈瘤破裂は、死亡率が高く重篤な病態であり迅速な対応が必要となる。しかし本症例は単純CT所見により重症急性膵炎と診断されたため、膵十二指腸動脈瘤破裂の診断、治療が遅れる結果となった。単純CTで膵頭部周囲を取り囲むように低吸収域を認めた際は膵炎だけでなく,膵十二指腸動脈瘤破裂も念頭において早急に造影CTを行うべきと考えられた。若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 膵十二指腸動脈瘤破裂, 正中弓状靱帯圧迫症候群