セッション情報 一般演題

タイトル 44:

蛋白漏出性胃腸症を伴う胃癌の1例

演者 細村 直弘(山梨大学 医学部 第一外科)
共同演者 河口 賀彦(山梨大学 医学部 第一外科), 芦沢 直樹(山梨大学 医学部 第一外科), 赤池 英憲(山梨大学 医学部 第一外科), 土屋 雅人(山梨大学 医学部 第一外科), 藤井 秀樹(山梨大学 医学部 第一外科)
抄録 【はじめに】蛋白漏出性胃腸症は胃や腸の消化管粘膜から血漿タンパク、とくにアルブミンが漏出することにより、低タンパク血症をきたす症候群である。軽度の蛋白漏出は肝臓でのアルブミン合成の促進など代償機構が働くが、それが破たんするほど著しく、また持続的に蛋白漏出が続いた場合に低タンパク血症となる。今回、十分量の栄養管理を施行したにも関わらず血清アルブミン値の改善を得られず、手術により改善した蛋白漏出性胃腸症を伴う胃癌の1例を経験したので報告する。【症例】79歳、女性。食思不振と体重減少があり近医受診し、胃癌を認めて当科紹介受診した。既往歴に無症状の閉塞性肥大型心筋症がある。入院時身長140cm,体重33.7kg。尿中蛋白55mg/日。腫瘍マーカーはCEA,AFP,CA125,CA72-4,CA19-9いずれも基準値内。上部消化管内視鏡で胃角から十二指腸球部に至る2型病変を認めた。99mTc標識ヒト血清アルブミンシンチグラフィでは投与4時間後より腹部に集積を認め、24時間後に結腸に集積した。術前栄養管理として経管栄養と高カロリー輸液を併用した。Harris-Benedictの式を用い、BMR879kcal、活動係数1.3、ストレス係数1.5として、熱量1836kcal(タンパク質320kcal(80g)、脂質612kcal、炭水化物904kcal)を投与した。その後も血清アルブミンは2.1g/dl~2.4g/dlの間を推移し改善しないため手術を施行した。術前にアルブミン輸液を25g/日5日間施行し血清アルブミン値は3.6g/dlに上昇した。開腹幽門側胃切除、D1リンパ節郭清、Roux-en-Y再建、胆摘を施行した。術後病理診断はpor1, se,ly1,v1,n1であった。術後合併症は認めず、血清アルブミンも3.3g /dl以下には低下せず徐々に増加した。【まとめ】術前に低タンパク血症を認める胃癌症例では蛋白漏出性胃腸症を考慮する必要である。また蛋白漏出性胃腸症の診断がつき、栄養状態の改善が見られない場合は栄養状態にこだわらず手術を施行する必要がある。一方、蛋白漏出性胃腸症を伴う胃癌の栄養管理に関してはさらに症例を蓄積し改善していく必要がある。
索引用語 蛋白漏出性胃腸症, 胃癌