セッション情報 一般演題(専修医(卒後3-5年))

タイトル 63:

回盲部単純性潰瘍の1例

演者 中村 晃(長野県立木曽病院 内科)
共同演者 山崎 智生(長野県立木曽病院 内科), 富永 新平(長野県立木曽病院 内科), 竹内 和航(長野県立木曽病院 内科), 北原 桂(長野県立木曽病院 内科), 飯嶌 章博(長野県立木曽病院 内科), 小山 佳紀(長野県立木曽病院 外科), 河西 秀(長野県立木曽病院 外科), 小出 直彦(長野県立木曽病院 外科), 下条 久志(信州大学医学部付属病院 病理学教室)
抄録 症例は32歳男性。4月中旬より特に誘因なく上腹部痛が出現した。痛みが増悪し、食事がとれなくなったため5月初旬に近医を受診した。上部消化管内視鏡検査では異常をみとめず、PPIを処方されたが痛みの改善はなかった。近医再診時の血液検査でWBC 11,000/μl, CRP 7.1mg/dlと炎症反応の上昇を認めたため精査加療目的に当科入院となった。外来での経過中、下痢や血便など便通異常は認めなった。腹部造影CTで上行結腸に壁肥厚を認めたことから上行結腸憩室炎と診断し、絶食のうえ抗生剤(SBT/CPZ 2g/日)を開始した。しかし38℃台の発熱と腹痛が持続し、炎症反応の改善もみられなかった。入院第8病日より咽頭痛を認め、口腔内アフタが出現した。精査目的に上下部消化管内視鏡検査を施行した。上部消化管内視鏡検査では口腔内に類円形の潰瘍を散見したが食道から十二指腸には異常所見は認めなかった。下部消化管内視鏡検査では回盲弁から終末回腸に深掘れ潰瘍を認め、その他の結腸、直腸には所見を認めなかった。HLA-B51は陽性であったが身体所見、内視鏡所見、病理組織検査などから総合的に単純性潰瘍と診断した。第13病日よりPSL 40mg/日、5-ASA製剤3g/日の内服および成分栄養剤による栄養療法を開始した。第14病日には36℃台に解熱し、CRPも改善傾向を示した。第18病日(PSL開始6日目)には腹痛は軽減し、CRPも陰性となった。第20病日(PSL開始8日目)よりPSL30mg/日に減量し、その後は5mg/週ずつ漸減したが、発熱、腹痛、炎症反応の再燃を認めず、第45病日にPSL15mg/日で退院した。またPSL開始1か月後に下部消化管内視鏡検査を施行したところ、回盲部の潰瘍は縮小していた。その後外来にてPSL5mg/週ごと減量したが、発熱や腹部症状の増悪を認めなかったため、第70病日にPSL終了とした。5-ASA製剤の内服のみ継続としたが、通院が途絶えたため無治療となった。通院が途絶えてから約11ヵ月後に健診異常で受診したが、腹部症状の再燃はなく経過良好とのことであった。今回我々は上行結腸憩室炎や腸管ベーチェット病などとの鑑別を要した回盲部単純性潰瘍の1例を経験したため、考察も踏まえて報告する。
索引用語 単純性潰瘍, 回盲部