セッション情報 一般演題(専修医(卒後3-5年))

タイトル 03:

肝細胞癌副腎転移の一例

演者 小林 奈津子(長野中央病院 消化器内科)
共同演者 松村 真生子(長野中央病院 消化器内科), 田代 興一(長野中央病院 消化器内科), 小島 英吾(長野中央病院 消化器内科), 大野 順弘(長野中央病院 病理科)
抄録 症例は, 76歳男性. 平成22年11月に肝S7に発生した直径15mmのC型肝炎関連肝細胞癌に対して肝動脈化学塞栓療法が行われ, 以降再発なく定期通院していた. 平成24年9月のCT検査では異常を認めなかったが, 翌年2月に撮影したCT検査にて肝S7と右副腎の間に造影早期相で濃染し, 後期相で低濃度化する60mm大の腫瘤が指摘された. MRIT2強調画像では肝と等からやや高信号で, 内部に変性を疑う強い高信号を認めた. 脂肪の存在は指摘できなかった. 腫瘤が前回治療部位と接していたことから肝内の遺残再発を疑ったが, 血管造影検査では腫瘤は右下横隔膜動脈と右腎動脈からの分枝で栄養されており, 肝内からの血流は認められなかった. MRI所見は褐色細胞腫として非典型的であり, 増大速度が非常に速いことや内部信号が不均一であること, 肝細胞癌の既往があることから副腎癌もしくは肝細胞癌の転移が鑑別に上げられた. しかし各種副腎ホルモンが正常範囲内であり, AFP2500ng/mlと著名な高値を認めたことから, 肝細胞癌副腎転移の可能性が高いと診断した. 他臓器への転移を認めず, 原発巣もコントロールされている肝細胞癌副腎転移については切除することにより生存期間の延長が得られることが報告されている. 本例も肝内を含め, 副腎以外に再発所見を認めなかったため, 開腹下右副腎切除術を施行した. 術中, 副腎と肝臓が強固に癒着していたため, 肝の一部も含めて切除した. 病理学的には肝臓とは被膜を隔てており, 周囲を進展された副腎皮質に覆われた中分化型肝細胞癌の像であり, 肝細胞癌副腎転移と診断された. 術後約半年経過するが再発は認めていない. 肝細胞癌の副腎転移はまれではなく, その頻度は 剖検例を対象とした全国集計で約10%と報告されている.今回われわれは短期間で急速に増大した肝細胞癌副腎転移に対して外科的切除を施行した一例を経験したので文献的考察を踏まえ報告する.
索引用語 肝細胞癌, 副腎転移