セッション情報 一般演題

タイトル 11:

全身性エリテマトーデスを合併した自己免疫性胆管炎の1例

演者 張 淑美(長野県立須坂病院 内科)
共同演者 赤松  泰二(長野県立須坂病院 内視鏡センター), 下平 和久(長野県立須坂病院 内科), 坂口 みほ(長野県立須坂病院 内科), 徳竹 康二郎(長野県立須坂病院 内科)
抄録 70歳代の女性。体調不良をきっかけに近医を受診し肝機能障害と肝内胆管拡張を指摘されて、2012年12月当科へ紹介された。検査入院を予定したが、患者の希望でいったん入院をキャンセルした。その約2ヵ月後、再び入院を希望しERCPを施行した。総胆管から左肝管分岐まで狭小化を認めたが細胞診にて悪性細胞を認めず、また自覚症状は無かったため外来で経過観察の方針とした。さらに2ヵ月後の定期受診時、CRPが12mg/dlに上昇し、胆管炎の診断で再入院した。抗生剤の投与にて加療を開始したが、その後心不全兆候を呈し心エコーでは心嚢水の貯留を認めた。血液検査上、炎症反応高値、肝・胆道系酵素上昇、入院前に提出していた抗核抗体(ANA)が1280倍以上で抗Sm抗体19.4U/ ml、抗ds-DNA-IgG抗体181IU/ ml と陽性で、臨床症状と併せると全身性エリテマトーデス(SLE)の診断基準を満たしていた。抗ミトコンドリア抗体(AMA)陰性、血清IgG 4029mg/dl、IgG4 238 mg/dlと高値であった。ERCPを再検したところ、肝門部を中心にびまん性に広狭不整を認め、IDUSでは全層性の壁肥厚を認めた。生検では形質細胞と成熟好中球の浸潤が目立つ肉芽様組織で特異的な所見は無く、炎症性変化と考えられた。さらに肝生検を施行したところ、細胆管周囲にリンパ球主体の細胞浸潤がみられ、細胆管の増生も伴い、非特異的な胆管炎と考えられた。また、IgG、IgG4染色を施行したが明らかな陽性細胞は認められなかった。SLEに伴う自己免疫性胆管炎と診断し、プレドニン40mg/日内服を開始したところ、症状は速やかに改善し現在は外来にて内服加療中である。【考察】自己免疫性胆管炎はAMA陰性でANAが陽性を示す胆汁鬱滞を主体とする新しい概念の肝疾患として提唱されたが、現在は原発性硬化性胆管炎の亜型と考えられている。しかしながらその診断基準に対してはコンセンサスが得られていない。また原発性胆汁性肝硬変の10%には診断時にAMA陰性となる症例がある。近年SLEやシェーグレン症候群などに胆・膵疾患が合併することが報告されており本例はオーバーラップした病態と考えられた。
索引用語 SLE, 自己免疫性胆管炎