抄録 |
【はじめに】白血病の経過中に髄外病変として消化器病変を認めることはなれではないが、今回我々は腫瘍細胞浸潤による食道潰瘍が契機となり急性白血病が発見された症例を経験したので報告する. 【症例】60歳代、男性. 主訴:食事のつかえ感. 2013年4月上旬より食事のつかえ感、食欲不振が出現し当院内科を受診. 内視鏡検査で下部食道に潰瘍性病変を認め食道癌疑いで外科紹介となった. 【Laboratory data】初診時: WBC3890, Hb14.3, Plt10×104, TP7.1, Alb3.7, FBS275, HbA1c(NGSP)12.4で軽度低アルブミン血症と高度糖尿病を認めた. 内視鏡後追加検査:CEA 2.1, CA19-9 32, SCC 0.7 腫瘍マーカーに異常値を認めず.【内視鏡所見】下部食道に亜全周性の潰瘍性病変を認めた. 潰瘍形態は不整型も潰瘍辺縁は比較的整でpunched out様の陥凹を示した. 潰瘍底も凹凸を示すもののヨード散布ではまだらに染色されていた.【生検病理】necrotic mass, no atypia. ulceration of the esophagus, negative for cancerであった.【CT所見】下部食道の壁肥厚と噴門部小弯に径13mm大のLN腫大を認めた.下部食道癌+LN転移疑い であった.【経過】生検では悪性所見を認めなかったが、CT所見などから完全に悪性疾患も否定できず短期の定期観察が必要と判断した. また未治療の糖尿病は、糖尿病内科に精査加療を依頼した. 内科2回目の受診時採血でWBC18800と上昇を認め、1週間後の再検では WBC35290と急増を認めたため、白血病を疑い血液内科のある基幹病院に紹介した. 精密検査が施行され急性骨髄性白血病と診断された.【考察・結語】白血病の髄外病変はまれではないが、慢性の経過中や再燃時に認められることが多い. 消化管病変としては、びらん、潰瘍、消化管出血、腫瘤形成などの報告があるが、腫瘍細胞浸潤に伴う消化管潰瘍が白血病発見の契機となる症例はまれである. 消化管の非典型潰瘍性病変を認めた場合は、ウィールス感染や非特異的炎症性腸疾患だけでなく血液疾患も念頭に置いて精査をすすめる必要があると思われた. |