セッション情報 一般演題(研修医(卒後2年迄))

タイトル o-020:

肝膿瘍腹腔内破裂をきたした胆管癌の1例

演者 中川 亜希(公立羽咋病院 内科)
共同演者 西野 隆平(公立羽咋病院 内科), 川口 和紀(公立羽咋病院 内科), 鵜浦 雅志(公立羽咋病院 内科)
抄録 【症例】69歳男性。脳梗塞後遺症、認知症にて当院脳神経外科へ通院中、2010年に肝胆道系酵素上昇を認め当科紹介、中部胆管癌と診断。手術適応と判断したが本人拒否にて内視鏡的にチューブステントを挿入、化学療法を行っていた。同年9月チューブステント閉塞しメタリックステントへ交換、2011年3月にはステント内腫瘍浸潤のためノンカバー型メタリックステントをステント内留置した。以後緩和ケアのみで経過観察していた。2012年3月には肝両葉の多発肝膿瘍にて入院、絶食やメロペネム投与など保存的治療で改善。その後も胆管炎を繰り返したがいずれも抗生剤投与のみで改善。2013年1月中旬、40℃台の発熱と食欲不振を認め、セフカペン内服にて改善せず当科受診、入院となった。CTにて肝S8を最大径とし低吸収を示す多数の占拠性病変が出現、更に肝表横隔膜直下にガス像を伴う同等の吸収度を示す病変を認め、肝膿瘍腹腔内破裂と診断した。肝表の膿瘍は被包化していると考えられ、絶食にてセフォペラゾン投与を開始し、入院翌日経皮的膿瘍ドレナージを施行、悪臭を伴う多量の膿汁を排出した。膿汁培養ではBacteroides thetaiotaomicron、Enterococcus aviumなどを検出し逆行性胆道感染による化膿性肝膿瘍と判断した。抗生剤投与継続により肝膿瘍は消退、腹腔内膿瘍も縮小。ドレーンからの造影ではB8と交通を認めた。ドレーン刺入部皮膚感染を合併したため入院57日後にドレーンを抜去したが、以後膿瘍増大はなく、熱型も安定化。摂食不良に伴う低アルブミン血症と胸腹水が出現し、利尿剤投与や腹水濃縮再静注などの対処を行っている。【考察】肝膿瘍腹腔内破裂は比較的稀な病態であり、汎発性腹膜炎合併により重症化する場合が多く、開腹ドレナージを施行された報告例が多い。化膿性肝膿瘍ではガス産生による肝膿瘍内圧上昇が一因と推察されている。本例でもガス産生菌が検出されこれに矛盾しない経過であったが、膿瘍が被包化しており低侵襲な経皮的ドレナージにて軽快が得られた。【結語】肝膿瘍が腹腔内破裂した胆管癌の1例を経験したので文献的考察を含め報告する。
索引用語 肝膿瘍, 破裂